「この後はギルドに行って、転移魔法が入った魔石を貰います」
「転移魔法の入った魔石は高価だから、当日に、かつ所定の場所で渡されるんだ」
任務を迅速に行うため、道中の危険を回避するため、ということらしい。
もちろんもらわずに自身の魔法で行くこともできるし、移動も訓練として敢えて歩いて行くこともできる。
急ぎの任務や、同時受注者がいる場合は早い者勝ちにもなるので、時と場合による。
私たちが最初に向かう場所は、廃村近くの街。
そこで必要なものをそろえたり宿をとったりして、いざ任務に向かうという工程。
話しながら食べ終わったところで、ようやくギルドへ向かう。
露店街を抜け、人通りが落ち着いてきたところに、酒場のような場所が見えてきた。
この国の文字で『ギルド』と書かれたそこはまさしくギルドだ。
入ろうとしたところで、「あ」と声を上げた殿下が振り向く。
「中では「殿下」って呼ぶのは禁止な。めんどくさいから」
「わかりました」
街中では呼ばなかったからセーフだった。
でもそうか。街中では呼び名に気をつけないと。
殿下と呼んでいるのに王子様ということを忘れていた。
扉の鈴が鳴り、思ったより清潔そうな木製の作り。
観葉植物があると印象が良いのは何故だろうか。
正面のカウンターに座る紳士なお爺さんに向けて、ロタエさんは書類を一枚差し出す。
「こちらの任務を実行します。転移の魔石をお願いします」
「はいはい。魔石ですねー」
眉毛なのか睫毛なのか目の周りがふさふさすぎてどこを見ているのかわからない。
移植できそうなほど長い。
邪魔じゃないのかな。
頭はすっきりしているのに。
ゴソゴソと足元を探り、目的のものを見つけて部屋の奥へ案内される。
決して広くはない部屋の床には円が描かれていて、その中に入るよう促された。
「えー、任務難易度は上級の(−)、えー、場所は、えー、プロピンキュスでお間違い無いですか?」
「はい」
「代表者はえー……カエ殿でお間違いですか?」
「間違いありません」
そんな人はいないが、その人になりきって応答しているカエ様。
受付のお爺さんは含んだ笑いをしているから、正体とか知っていそう。
お爺さんが手に持っていた石をカエ様に渡した。
「どうぞ、お気をつけて行ってらっしゃいませ」
紳士、執事のように慣れた手つきでお辞儀、お見送りされた。
カエ様が石に魔力を流し、足元の魔法陣も輝きだす。
目の前が白く輝き、お爺さんの姿が擦れていく。
あまりの光景に瞬きを忘れていたはずだが、気付いた時には周囲の景色は変わっていた。
「ようこそお越しくださいました」
また違ったお爺さんが、見送ってくれたお爺さんと同じ格好でお出迎えしてくれた。
さっきの人と同じタキシードみたいな服を着ているが、白髪のオールバックで、モノクル付きの精悍なお顔もよく見える。
「こちらへどうぞ。受注内容の最終確認をさせていただきます」
案内された部屋で、聞いたお話。
廃村の名前はピューリクリム。
転移してきた町、プロピンキュスを出て数十分歩いた先にある。
道のり真っ直ぐなので迷う心配はない。
同時に受注している人もおらず、周囲を気にせず魔法を使えるだろう。
ギルドと連携している宿で部屋も取ってくれた。
「時間は正午。さて、どうするか?」
ギルドを出てすぐの相談会。
どうするかと言われるが、食事は満足している。
観光が第一の目的ではないし、同時受注していないのならば……。
「今から行きましょう」
二人も同意してくれて、どこにも寄らずにピューリクリムを目指すことに決定。
道中は錆鼠・ラースの確認。
「ラースは小型の魔物。金属を食べ、体は錆を纏っている。錆と病気を巻き散らす害獣として駆除対象。弱点は火」
「そう。だが書面にも書いてあった通り、周辺に気を遣う必要があるため火は使えない。どうするかは決めているか?」
任務を受けてくれたのはカエ様とロタエさんだが、実際任務にあたるのは私となっている。
私が使えない属性の魔法を使うのが目的だから。
「考えてはあります……けど、本当に家とかはいいんですか?」
「受付にも確認したが、良いようだな。村人の署名もあったし」
廃村となった場所は、家が残っている個所も多くあるらしい。
しかしそれらは残さず、何ならラースとともに処分してしまっても構わないと。
ギルドや街が言っているのならやるのは気持ち的に憚られていたのだが、実際に住んでいた村民が良いというのなら、逆に気にしないでいいのでやりやすい。
だけど、いくら村を出たからと言って、家も何もかも無くして良いって……。
小骨のように引っかかるものがある。
「俺たちは新たに開拓する前の調査も含めているから、それはこちらに任せてくれ。そのかわり討伐は思う存分に」
「わかりました」
一応の考えとしては、今まで使ったり、見たりした魔法の復習をしようと思っている。
戦い方についてはスグサさんのアドバイスを受けながらになるが、魔法コントロールについては手出ししないと言われている。
歩いて数十分。廃村・ピューリクリムに到着した。
家らしき木造やレンガの建物が、屋根はなく吹き曝し状態で、見るも無残な状況で残っている。
畑は荒れ放題。
ラースのせいなのか、鉄臭い。
鉄臭さに鼻を覆いたくなる。血の匂いと間違えてしまうから。
「転移魔法の入った魔石は高価だから、当日に、かつ所定の場所で渡されるんだ」
任務を迅速に行うため、道中の危険を回避するため、ということらしい。
もちろんもらわずに自身の魔法で行くこともできるし、移動も訓練として敢えて歩いて行くこともできる。
急ぎの任務や、同時受注者がいる場合は早い者勝ちにもなるので、時と場合による。
私たちが最初に向かう場所は、廃村近くの街。
そこで必要なものをそろえたり宿をとったりして、いざ任務に向かうという工程。
話しながら食べ終わったところで、ようやくギルドへ向かう。
露店街を抜け、人通りが落ち着いてきたところに、酒場のような場所が見えてきた。
この国の文字で『ギルド』と書かれたそこはまさしくギルドだ。
入ろうとしたところで、「あ」と声を上げた殿下が振り向く。
「中では「殿下」って呼ぶのは禁止な。めんどくさいから」
「わかりました」
街中では呼ばなかったからセーフだった。
でもそうか。街中では呼び名に気をつけないと。
殿下と呼んでいるのに王子様ということを忘れていた。
扉の鈴が鳴り、思ったより清潔そうな木製の作り。
観葉植物があると印象が良いのは何故だろうか。
正面のカウンターに座る紳士なお爺さんに向けて、ロタエさんは書類を一枚差し出す。
「こちらの任務を実行します。転移の魔石をお願いします」
「はいはい。魔石ですねー」
眉毛なのか睫毛なのか目の周りがふさふさすぎてどこを見ているのかわからない。
移植できそうなほど長い。
邪魔じゃないのかな。
頭はすっきりしているのに。
ゴソゴソと足元を探り、目的のものを見つけて部屋の奥へ案内される。
決して広くはない部屋の床には円が描かれていて、その中に入るよう促された。
「えー、任務難易度は上級の(−)、えー、場所は、えー、プロピンキュスでお間違い無いですか?」
「はい」
「代表者はえー……カエ殿でお間違いですか?」
「間違いありません」
そんな人はいないが、その人になりきって応答しているカエ様。
受付のお爺さんは含んだ笑いをしているから、正体とか知っていそう。
お爺さんが手に持っていた石をカエ様に渡した。
「どうぞ、お気をつけて行ってらっしゃいませ」
紳士、執事のように慣れた手つきでお辞儀、お見送りされた。
カエ様が石に魔力を流し、足元の魔法陣も輝きだす。
目の前が白く輝き、お爺さんの姿が擦れていく。
あまりの光景に瞬きを忘れていたはずだが、気付いた時には周囲の景色は変わっていた。
「ようこそお越しくださいました」
また違ったお爺さんが、見送ってくれたお爺さんと同じ格好でお出迎えしてくれた。
さっきの人と同じタキシードみたいな服を着ているが、白髪のオールバックで、モノクル付きの精悍なお顔もよく見える。
「こちらへどうぞ。受注内容の最終確認をさせていただきます」
案内された部屋で、聞いたお話。
廃村の名前はピューリクリム。
転移してきた町、プロピンキュスを出て数十分歩いた先にある。
道のり真っ直ぐなので迷う心配はない。
同時に受注している人もおらず、周囲を気にせず魔法を使えるだろう。
ギルドと連携している宿で部屋も取ってくれた。
「時間は正午。さて、どうするか?」
ギルドを出てすぐの相談会。
どうするかと言われるが、食事は満足している。
観光が第一の目的ではないし、同時受注していないのならば……。
「今から行きましょう」
二人も同意してくれて、どこにも寄らずにピューリクリムを目指すことに決定。
道中は錆鼠・ラースの確認。
「ラースは小型の魔物。金属を食べ、体は錆を纏っている。錆と病気を巻き散らす害獣として駆除対象。弱点は火」
「そう。だが書面にも書いてあった通り、周辺に気を遣う必要があるため火は使えない。どうするかは決めているか?」
任務を受けてくれたのはカエ様とロタエさんだが、実際任務にあたるのは私となっている。
私が使えない属性の魔法を使うのが目的だから。
「考えてはあります……けど、本当に家とかはいいんですか?」
「受付にも確認したが、良いようだな。村人の署名もあったし」
廃村となった場所は、家が残っている個所も多くあるらしい。
しかしそれらは残さず、何ならラースとともに処分してしまっても構わないと。
ギルドや街が言っているのならやるのは気持ち的に憚られていたのだが、実際に住んでいた村民が良いというのなら、逆に気にしないでいいのでやりやすい。
だけど、いくら村を出たからと言って、家も何もかも無くして良いって……。
小骨のように引っかかるものがある。
「俺たちは新たに開拓する前の調査も含めているから、それはこちらに任せてくれ。そのかわり討伐は思う存分に」
「わかりました」
一応の考えとしては、今まで使ったり、見たりした魔法の復習をしようと思っている。
戦い方についてはスグサさんのアドバイスを受けながらになるが、魔法コントロールについては手出ししないと言われている。
歩いて数十分。廃村・ピューリクリムに到着した。
家らしき木造やレンガの建物が、屋根はなく吹き曝し状態で、見るも無残な状況で残っている。
畑は荒れ放題。
ラースのせいなのか、鉄臭い。
鉄臭さに鼻を覆いたくなる。血の匂いと間違えてしまうから。



