―――――……
思いの外売れた。
多めに作ったけど、何個か余ったのでカミルさんにも渡せそうだ。
訓練場で訓練兼営業をし、殿下の部屋へと向かう。
お城の中を歩くこと自体は久しぶりなので、周囲を見回したり、すれ違う人がいると顔を伏せたりしてしまう。
白い服が見えると、足が止まって畏縮する。
それでも何とか知っている扉の前まで来て、ドアを懐かしいリズムでノックする。
コンコン、コン。
「どうぞ」
知っている声を聞いて、肩の緊張がようやく解ける。
扉を開ければ、煌びやかな装飾品や家具は見覚えのあるもので、まるで家に帰ってきたような感じ。
「よう。久々、か?」
「そうですね、以前はスグサさんでしたから」
お久しぶりです、と挨拶を交わし、扉を閉めた。
部屋にはロタエさんが待機していて、紅茶を入れてくれていた。
ソファーに座るよう促され、殿下は誕生日席に、ロタエさんは正面に座り、三角形になる。
「お久しぶりですね。お元気ですか?」
「元気にやれています。ロタエさんもお変わりないようでよかったです」
カミルさんは痩せているように見えたけど、ロタエさんは変わりないようだ。
知っている記憶の通り、髪を一つにまとめ、タイトめのロングワンピースとローブを羽織っている。
紅茶を一口頂き、殿下が口を開く。
「ここに来れたということは、補習の準備は必要ないんだな?」
「はい。無事に試験は乗り越えられました。殿下やロタエさんたちが講義をしてくれたおかげです」
忙しい時間を縫っていろいろと教えてくれ、それが授業の内容と重なる部分があったことはきっと狙っていたのだと思う。
学校生活で苦労することを減らしてくれていたのだろう。
学校の話が出た時から、四学年で編入し、授業の内容まで考えてくれていたのだと思う。
座りながらだが、頭を深く下げて、感謝を伝える。
「気にするな。今の状況はお前のやる気もあってのことだ」
「そうですね。やる気がないと勉強も仕事もなかなかできません」
「おい。何の話だ?」
しれっと紅茶をたしなむロタエさんをジトっと見つめる殿下には、なにか心当たりでもあるようだ。
ちらりと殿下の机の上を見れば、山積みになっている書類や本の束。
「まだ長期休みでもないのに……大変そうですね」
「……まあな。まだ通達は出ていないのだが、近々身内ごとでな」
「そうなんですね」
はっきり言わないということは、まだ公にできる段階ではないのだろう。
私はロタエさんたちとは立場が違う。
……なんと表現したらいいのか難しいな。
『人形』『国家財産』『医術師見習い』『学生』『一般人』……。
「それでだっ」
声でハッとして、いつの間にか手元を見つめていた顔を上げる。
「ギルドの話なんだがな」
やっぱりその話だった。
「ヒスイも無事、補習を免れているということで、予定通り長期休暇中に行おうと思う。俺はスキルアップとして。同伴として、ロタエがつく」
小さくぺこりと頭を下げあう。
ロタエさんなら何も緊張することは……ない、かな……?
追いかけられたことを思い出し、背中に冷や汗がたどった。
気にしない気にしない。
「時期なんだが、希望はあるか?」
「第四週が、クザ先生と治療院に行くことになっているので、前半で都合がつくと嬉しいのですが……」
一月は十日間ずつ五週まである。
最後の週はライラさんたちと予定を入れたいと思ってはいるから、重ならないように前半にしたい。
「そうか。なら第二週後半から第三週の前半にかけてにしよう。第一週は俺が予定あってな。それでも構わないか?」
「大丈夫です」
「よし。じゃあ次だ」
数日間にわたって行う物なのかな、と疑問は残るものの、てきぱきとした動作で質問は飲み込むしかない。
お願いしているし、無茶なことはさせないだろうと思うし。
スグサさんじゃあるまいし。
殿下が視線をロタエさんに移し、ロタエさんは横に置いていた書類の中から数枚の紙を取り出した。
「これが、受注しようとしている任務です」
体を乗り出して、内容を見る。
用紙は三枚。分類はすべて『討伐』とされている。
難易度は魔法と合わせているようで、初級から特級まである。
かつそれが全て『+』と『-』となってるので計十段階評価だ。
『上級(-)』
廃村に住み着いた錆鼠・ラースの駆除
※ 数が多く、周囲は木々が多いため、効果的な火属性魔法は使用不可。
『上級(+)』
力試し! 海の魔物、怪鱗・ヤビクニを買い取ります!
※ 成功者には、一宿一飯を無料サービスします!
『最上級(-)』
砂の大地にて、猛尾・ルルの存在を確認。退治依頼。
※ 猛毒を持っています。解毒剤の準備が必須。現地では品薄のため注意。
なんか一つ異色なのがあるけど、いいのかな。
物珍しさもあって一枚手に取って詳しく読んでいると、扉をノックする音が部屋に響いた。
コンコンコン。
思いの外売れた。
多めに作ったけど、何個か余ったのでカミルさんにも渡せそうだ。
訓練場で訓練兼営業をし、殿下の部屋へと向かう。
お城の中を歩くこと自体は久しぶりなので、周囲を見回したり、すれ違う人がいると顔を伏せたりしてしまう。
白い服が見えると、足が止まって畏縮する。
それでも何とか知っている扉の前まで来て、ドアを懐かしいリズムでノックする。
コンコン、コン。
「どうぞ」
知っている声を聞いて、肩の緊張がようやく解ける。
扉を開ければ、煌びやかな装飾品や家具は見覚えのあるもので、まるで家に帰ってきたような感じ。
「よう。久々、か?」
「そうですね、以前はスグサさんでしたから」
お久しぶりです、と挨拶を交わし、扉を閉めた。
部屋にはロタエさんが待機していて、紅茶を入れてくれていた。
ソファーに座るよう促され、殿下は誕生日席に、ロタエさんは正面に座り、三角形になる。
「お久しぶりですね。お元気ですか?」
「元気にやれています。ロタエさんもお変わりないようでよかったです」
カミルさんは痩せているように見えたけど、ロタエさんは変わりないようだ。
知っている記憶の通り、髪を一つにまとめ、タイトめのロングワンピースとローブを羽織っている。
紅茶を一口頂き、殿下が口を開く。
「ここに来れたということは、補習の準備は必要ないんだな?」
「はい。無事に試験は乗り越えられました。殿下やロタエさんたちが講義をしてくれたおかげです」
忙しい時間を縫っていろいろと教えてくれ、それが授業の内容と重なる部分があったことはきっと狙っていたのだと思う。
学校生活で苦労することを減らしてくれていたのだろう。
学校の話が出た時から、四学年で編入し、授業の内容まで考えてくれていたのだと思う。
座りながらだが、頭を深く下げて、感謝を伝える。
「気にするな。今の状況はお前のやる気もあってのことだ」
「そうですね。やる気がないと勉強も仕事もなかなかできません」
「おい。何の話だ?」
しれっと紅茶をたしなむロタエさんをジトっと見つめる殿下には、なにか心当たりでもあるようだ。
ちらりと殿下の机の上を見れば、山積みになっている書類や本の束。
「まだ長期休みでもないのに……大変そうですね」
「……まあな。まだ通達は出ていないのだが、近々身内ごとでな」
「そうなんですね」
はっきり言わないということは、まだ公にできる段階ではないのだろう。
私はロタエさんたちとは立場が違う。
……なんと表現したらいいのか難しいな。
『人形』『国家財産』『医術師見習い』『学生』『一般人』……。
「それでだっ」
声でハッとして、いつの間にか手元を見つめていた顔を上げる。
「ギルドの話なんだがな」
やっぱりその話だった。
「ヒスイも無事、補習を免れているということで、予定通り長期休暇中に行おうと思う。俺はスキルアップとして。同伴として、ロタエがつく」
小さくぺこりと頭を下げあう。
ロタエさんなら何も緊張することは……ない、かな……?
追いかけられたことを思い出し、背中に冷や汗がたどった。
気にしない気にしない。
「時期なんだが、希望はあるか?」
「第四週が、クザ先生と治療院に行くことになっているので、前半で都合がつくと嬉しいのですが……」
一月は十日間ずつ五週まである。
最後の週はライラさんたちと予定を入れたいと思ってはいるから、重ならないように前半にしたい。
「そうか。なら第二週後半から第三週の前半にかけてにしよう。第一週は俺が予定あってな。それでも構わないか?」
「大丈夫です」
「よし。じゃあ次だ」
数日間にわたって行う物なのかな、と疑問は残るものの、てきぱきとした動作で質問は飲み込むしかない。
お願いしているし、無茶なことはさせないだろうと思うし。
スグサさんじゃあるまいし。
殿下が視線をロタエさんに移し、ロタエさんは横に置いていた書類の中から数枚の紙を取り出した。
「これが、受注しようとしている任務です」
体を乗り出して、内容を見る。
用紙は三枚。分類はすべて『討伐』とされている。
難易度は魔法と合わせているようで、初級から特級まである。
かつそれが全て『+』と『-』となってるので計十段階評価だ。
『上級(-)』
廃村に住み着いた錆鼠・ラースの駆除
※ 数が多く、周囲は木々が多いため、効果的な火属性魔法は使用不可。
『上級(+)』
力試し! 海の魔物、怪鱗・ヤビクニを買い取ります!
※ 成功者には、一宿一飯を無料サービスします!
『最上級(-)』
砂の大地にて、猛尾・ルルの存在を確認。退治依頼。
※ 猛毒を持っています。解毒剤の準備が必須。現地では品薄のため注意。
なんか一つ異色なのがあるけど、いいのかな。
物珍しさもあって一枚手に取って詳しく読んでいると、扉をノックする音が部屋に響いた。
コンコンコン。



