未来未定

野外活動みたいなイベント行事は、私が動いてなくても喋り倒してても着々と進み、カレーは出来上がった。

「ねぇ、一緒に食べよう佐藤さん、新入生交流会って、この学校に馴染むためにあるからさ」

「……嫌」

誰かとご飯食べるなんてしたことないもの。
食べてる口元を見られるのも嫌。
なんなら、このカレーを食べることも嫌。

「なんで!?あ、しつこい?ごめんごめん、文芸部に入ってくれるなら仲良くなっておきたいじゃん?今のうちに」

「恩田先輩にあげますよ、私の分のカレーが欲しいなら」

「……ってそうじゃない、カレーが欲しいんじゃないよ。佐藤さんが欲しいんだよ、えっと、佐藤未来さん」

「……下の名前、覚えてくれてたんだ」

「もちろん、文芸部だからね、人の名前を覚えるのは、小説書く時意識してるから自然と人の名前覚えれるようになったよ。なんなら下の名前で呼ぼうか?」

「未来って名前嫌いなんですよ、こんな未来のない人生なのに」

「未来がない?未来なら決まってる、文芸部に入って僕と小説を書くっていうね。読み合いっことかしちゃおうか」

「……」

「なに?僕いま何か言った?」

「いや、別に……恩田先輩、これで今まで本当に文芸部人いなかったなんて嘘でしょ」

「そもそも後輩と話す機会が行事くらいしかないのさ、勧誘のしようがないぐらい、ただの僕の居場所になってしまってるんだから」

「……はぁ。ハイハイ、恩田先輩が私のカレー食べてるところを見ててあげますから」

「ダメ、佐藤さんも食べるの。じゃあそこまで言うなら食べ始めるまで僕は食べ始めないね。食べ終わるまで2人とも周りが片付けしててもずっと二人で食べ終わるまで居座るんだよココに」

「………なにそれ。もっと酷い、もう、食べればいいんでしょう、食べれば」

「うんうん、細いんだからさ、ちゃんと食べな。食べてるところ見なきゃ心配になるよ」

「そりゃあ、何とか食べてますよ、週に1回の1000円でね」

「は…?それ、親から貰ってんの?」

「……親からですよ。働いてるように見えますか、このニートが」

「足りないでしょ1000円じゃ、親何してんだよ。佐藤さんが何も食べてないことはよく分かったよ」

「食べてますって、夜ご飯はたまに出てくるし」

「……ウチおいでよ、僕の家、住む?ご飯くらい毎日作ってあげるよ。そりゃあ、男女が住む家なんてって思うかもしれないけど、それか一緒にアルバイトで働く?僕の働いてる本屋さん、紹介してあげようか」

「ウチには行かない、けど、バイトは気になる。でも、怖いから無理」

「んー……そっか、怖いよね。初めては特に」