死にたいだとか死にたくないだとか、人は悩んでばかり。
仕方ないじゃん、形あるものはいつかは壊れるんだから。
人も終わりに向かって壊れていくの。
寿命、病気、衰弱、どんな理由であれ、生きてる以上死ぬことが決まっているの。
勝手に産み出しといて、産まない方がよかっただなんて、口が裂けてでも言わないでほしいところ。
生き抜いていくのは結局自分自身の力なんだから。
良いよ、生き抜いてあげる。
あんたが殺したくなっても、私は逃げて生きてみせる。
産んでくれたなんて思ってもないけど、痛い思いしてまで死にたくないしね。


酒癖の悪い上に男の趣味も悪い母親。
家に男を連れ込んでは、狂ったように甘えて、気持ちが悪い。
母親の女の部分を見るのが、吐くほど嫌い。
「……ッ……ォ……オエッ……」
ボトボトとトイレの水の中に吐き戻した汚物が飛び跳ねて顔についても、ただペーパ―で拭って汚物と一緒に流して終わり。
トイレの水で手を洗って、急いで自分の部屋がある目の前の部屋に鍵を閉めて閉じこもる。

死にたい?
もうそんな考えは通り過ぎた。
中学生の時、市の相談員が訪ねてきても、仲のいいフリしてやり過ごした。
母親の機嫌をうかがうのは、正直15年生きてきてずっと一緒にいるけどまだ慣れない。
だって、そん時一緒にいる男の影響をもろ受けてるんだもん。
男の趣味も悪いしさ、灯油かけるような男とか、出来立てのカップラーメンが熱すぎるだろって私に投げつけてきたり。
何でそんな男しか捕まえられないのかな。
趣味悪すぎでしょ。

「ねぇ、あんたまた吐いたの、トイレの中すごい匂うんだけど、いい加減にして。
彼に嫌われちゃうじゃない。体調管理すらまともにできないの?てか未来(みらい)学校は?」

こんな時でも男の心配。
誰のせいだと思ってんの。
母親の女の姿が焼き付いて離れない。
何度も思い出しては吐いての繰り返し。
そのせいで食べ物も受け付けなくて、体力もないんだから。

それに未来なんて名前、私には似合わない。
これからの人生なんて真っ暗だもん。
未来なんて明るく綺麗な雰囲気なんて全くなくて、髪切るお金すらなくて、伸ばしっぱなしのまま。
この髪が鬱陶しい、ケアするお金もないからボサボサで枝毛だらけ。
お風呂入ることも嫌いだし、体力がないからお風呂入ったすぐはいつも座り込むせいでドライヤーする気力もない。

早くこの家を出たい。
何度母親に怒りを向けたことか。
でもそんなの無駄なことだって気付いた。
私が働いて出てけばいい、ただそれだけ。
高校生になったことだし、働ける年齢だしね。
それに通信制の高校で週に1回しか登校しないから、時間もある。
働くには、都合がいい。

だけどこんな清潔感のない姿で面接が受かるわけないし、自分で髪でも切ろうかな。
醜い姿が鏡越しに滲んで見える。
いつからこんな生活になったの。
母親が浮気さえしなければ、お父さんと仲良く暮らしていたんだろうか。

浮気したはずなのに、親権は母親持ちって今でも理解できない。
父親は働いていたから?世話をしてないから?
母親の方がしてないじゃない。
働いて家にお金いれてるお父さんのがよっぽどいいよ。

いまでも、養育費を払ってくれてるものの、全部男の貢ぎ物に消えてることは父親は知りもしない。
でも想像はできるだろうな。
だって浮気が原因なんだから。
当時から多額の借金抱えてたし。
それを違う男に払ってもらったり、母親には自力で稼いで生活するような能力はない。

そしてこの私も、自己管理ができない。
こんな環境で、そんなすぐ働けたら苦労しない。


『また母親に吐いたのバレた』
snsで愚痴をこぼす。
だれかココから連れ出して。
私を遠くに連れ出して。
死にたいだなんて感じさせないくらい、埋め尽くして。
『体調不良ですか』
そんなリプライ見飽きた。
タダノ偽善者だとしか思えないほどに歪んでしまった。

そろそろ3限目くらいになるか。
授業中に入るのは気が引ける。
注目浴びるのは嫌だから。

あー、ご飯何かあるかな。
1週間に1度、千円をもらってて、それでご飯を買うんだけど。
夜ご飯は出てきたり出てこなかったり、母親の気分次第。
この生活もうんざり。