[09] ふたりの間に生まれる変化
遊園地デートの翌週、ミュージカル部で事件が起こった。
「滝川の演技、最近変わったな」
舞台稽古の休憩時間、共演者の**森山丞身(もりやま じょうしん)**が声をかけてきた。
「え?」
「前よりも感情が伝わるようになった。何かあった?」
「……」
奈穂はドキッとする。
(まさか、良樹と過ごしてるおかげ…?)
そう考えた瞬間、胸の奥が熱くなった。
(いや、そんなわけない。これはただの“契約”なんだから)
でも――
「なあ、滝川。今度、俺と練習しないか?」
「え?」
「お前の演技、もっと良くなりそうな気がする。俺が手伝うよ」
森山は真っ直ぐな目で言った。
それはまるで、良樹が最初に映画の主演を頼んできた時と同じくらい、真剣な眼差しだった。
「……考えておくね」
奈穂は曖昧に微笑んで、その場を後にした。
――その日の帰り道、LINEの画面を開いた。
📱 良樹:今日の練習どうだった?
📱 奈穂:ちょっと驚いたかも。演技、前より良くなったって言われた
📱 良樹:それは良かったな
📱 奈穂:うん
送信してから、ふと気づいた。
(……なんでだろ)
森山に褒められたのに、それよりも良樹に伝えたくなった自分がいた。
(この気持ち、なんなんだろう)
自分の中で、何かが少しずつ変わり始めていた。
遊園地デートの翌週、ミュージカル部で事件が起こった。
「滝川の演技、最近変わったな」
舞台稽古の休憩時間、共演者の**森山丞身(もりやま じょうしん)**が声をかけてきた。
「え?」
「前よりも感情が伝わるようになった。何かあった?」
「……」
奈穂はドキッとする。
(まさか、良樹と過ごしてるおかげ…?)
そう考えた瞬間、胸の奥が熱くなった。
(いや、そんなわけない。これはただの“契約”なんだから)
でも――
「なあ、滝川。今度、俺と練習しないか?」
「え?」
「お前の演技、もっと良くなりそうな気がする。俺が手伝うよ」
森山は真っ直ぐな目で言った。
それはまるで、良樹が最初に映画の主演を頼んできた時と同じくらい、真剣な眼差しだった。
「……考えておくね」
奈穂は曖昧に微笑んで、その場を後にした。
――その日の帰り道、LINEの画面を開いた。
📱 良樹:今日の練習どうだった?
📱 奈穂:ちょっと驚いたかも。演技、前より良くなったって言われた
📱 良樹:それは良かったな
📱 奈穂:うん
送信してから、ふと気づいた。
(……なんでだろ)
森山に褒められたのに、それよりも良樹に伝えたくなった自分がいた。
(この気持ち、なんなんだろう)
自分の中で、何かが少しずつ変わり始めていた。



