約束の恋-良樹と奈穂-

[14] 交差する視線
「お前、最近あいつとよく一緒にいるな」
数日後、映画の撮影の合間に良樹が言った。
「……え?」
「森山のことだよ」
「別に、普通に仲がいいだけだよ」
「そうか」
それだけ言って、良樹は視線をそらした。
(え、何? 何か言いたいことがあるなら言えばいいのに)
奈穂の胸がざわつく。
でも、それを言葉にすることができなかった。
お互いの夢を叶えるために始めた関係。
だけど――
(私たち、どこへ向かってるんだろう)
その答えが分からないまま、夏は過ぎていった。