約束の恋-良樹と奈穂-

[13] すれ違う心
夏祭りが終わった後も、良樹とはまともに話せないまま時間が過ぎた。
(何やってるんだろう、私)
ミュージカルの練習は順調だった。
でも、それと引き換えに、何かを失っている気がする。
そんなある日。
「奈穂、練習終わったか?」
森山が声をかけてきた。
「……うん」
「じゃあ、ちょっと付き合えよ」
「え?」
「お前、最近なんか元気ないだろ」
森山は優しく微笑んだ。
「お前が辛い時くらい、俺がそばにいるよ」
その言葉が、心に染みた。
――その日の夜、初めて奈穂は良樹のLINEを未読スルーした。