……ッチ、うるさ。

季威の扱いがめんどくさくなったから中に入ったのに、季威はついてくるし、その上、中は耳をふさぎたくなるほどの悲鳴が辺りに響いて、まるでここはライブハウスだ。



あー……やっぱ、学校入んなきゃよかった。


理由は単純明快。俺が中に入ったこと、そして隣に季威がいるせいだ。

まぁ元々俺も顔が整っている方ではあり、告白も結構な数されているが、それ以上に顔は良く、明るくムードメーカー的存在の季威はモテる。

…あと、こいつ御曹司だし。
金目当ての女がみんなして近づいてくる。



「…はぁ、ほんとお前モテるよな。彼女でも作ればこのうるさいのなくなんじゃないの。」

めちゃくちゃ嫌味ったらしい言い方になったが、事実だ。
これだけモテるのに季威は彼女を作ったことがない。


……お前に彼女がいたらさっさと諦められんのに。



「きい、彼女なんていらないよ?作るわけないじゃん、だってゆーりと一緒にいる時間が減るし?」

……っ!!なんなんだこいつッ!!

その瞬間血が逆流したかのように体が熱く火照ってきて、心臓がおかしくなったように暴れ出す。


「……っ、は、そりゃどーもありがとうございまして。」

ばか、勘違いすんだろうが………。

俺は慌てて平静を装って返事を返す。
…このバカの話を真面目に受け止めたらダメだ。


「てかさーここ数年ずっと思ってたけど、ゆーりって満足に人の話聞かないよねっ。」

なんて、不満げに言う季威にそりゃそうだろ……、と内心ツッコむ。
いきなりあんな事言われてまともに会話なんてしてたらおかしくなるっつーの。


「……逆に聞くけどさっきの言葉もまともに会話するために言ってたわけ?だとしたら頭おかしいから。」

「もーーまたバカにしてる?きいのこと。」

「……はぁ。」


してないよ、本当はしたいけど。

ボコボコに罵って、季威が俺を嫌ってくれるくらいにね。