死んでも人に言えないヒミツ

「滝」

次の角をまがれば大通りに出れる、というタイミングで声をかけられた。ビクッと肩が震える。おそるおそる振り返ると、そこには名島くんが立っていた。

「……追いかけてきたの?」

「だって滝、がっつり目合ったのに逃げてくから」

「それは……」

名島くんが悪そうな人 たちと一緒にいるところを見てしまったから、とは言えなかった。

表情だけでは、彼が何を考えているのか読み取れない。学校でしか会ったことがないから、私服姿はなんだか新鮮だった。制服を着ているときの爽やかなイメージとは裏腹に、黒の大きめのパーカーに暗めのデニムを穿いていて、雰囲気はいつもよりダークに感じる。
 
名島くんと私。ただのクラスメイトだ。
 
同じ広報委員ではあるけれど、委員会の集まりは月に一度だけなので、友達と呼べるほどの言葉は交わしたことがない。だから、名島くんの学校外の交友関係までは知るはずもない。

「……いつもと……学校と、なんか雰囲気違うね」
 
学校での名島くんは、女子人気も高くて、先生からも信頼されていて、友達も多くて、勉強も運動もできる完璧な人。いい子、なんて言葉じゃおさまらないくらい、誰にでも平等に優しい。キラキラしすぎて私には眩しすぎるくらいだ。
 
人気者の理由が、彼にはちゃんとある。

「べつに変わらないと思うけど。いつもってさ、滝の中で俺ってどう見えてんの?」
 
じゃあ、今私と話しているのは本当にあの(・・)名島くんなのだろうか。

「あ、いや……えっとごめん。気のせいだったかも」

「そう?」

「私もう帰らなくちゃ。……また明日」

決して強い言葉をかけられたわけではないのに、わかったように言うな、と言われているような気がして、それ以上は何も言えなかった。

目を逸らし、小さく手を振って別れる。



名島皐月は完全無欠──なんて、最初にそう言ったのは誰だろう。