「待って滝」
委員会が終わり、名島くんとこれ以上無駄な話をしないために早急に教室を出たつもりが、引き留められてしまった。聞こえないふりをするのはあまりにも感じが悪すぎる気もして、私は渋々足を止める。
「なんか用事でもあるの?」
「ないけど……」
今日は、どうしてこんなに名島くんに捕まってしまうんだろう。昨日、たまたま名島くんの違う一面を見てしまったせいで変に意識しすぎているせいかとも考えたけれど、とはいえこの違和感はなんだろうか。
思い込みかもしれないけれど、名島くんの雰囲気も、なんとなくいつもと違うように感じる。いつも、というのはつまり学校で見ている胡散臭い名島くんを指すものであって、 今日の名島くんに対して抱いている嫌悪感は、胡散臭さからくるものとは違う部類のそれだ。
「一緒に帰ろうよ」
「え……なんで?」
「だって方向同じじゃん。それに──昨日も会ったし?」
平然と言われたそれに、私は言葉を詰まらせた。
昨日、地元の図書館からの帰り道に見た光景。いかにも悪そうな人たちと話す声。煙草を吸っていそうな会話。あれが、名島くんの裏の顔なんだとしたら。
『滝の中で俺ってどう見えてんの?』
昨日名島くんに言われた言葉。あのとき見た名島くんは幻じゃなくて、たしかに本人だったと言われているような感覚になる。
私の中で、名島くんは。完全無欠と謳われる、絶対に裏があるであろう名島皐月は。
「……私、名島くんのこと苦手」
「ふ。それ、昨日の質問の答え?」
「答えっていうか……うん、苦手っていうか、嫌いかも」
「奇遇。俺もさ、滝のこと見てるとなんか腹立つんだよね」
名島くんが笑う。棘 のある言い方なのに表情は笑っていて、それもまた不気味だった。
「まあ、こんなところで話すのもなんだし帰ろうよ。俺、滝にもっと聞いてみたいことあるからさ」
私は名島くんと話すことなんてない。
いったい彼は、なんの話をするつもりなんだろう。
名島くんのことが、やっぱり嫌いだ。
委員会が終わり、名島くんとこれ以上無駄な話をしないために早急に教室を出たつもりが、引き留められてしまった。聞こえないふりをするのはあまりにも感じが悪すぎる気もして、私は渋々足を止める。
「なんか用事でもあるの?」
「ないけど……」
今日は、どうしてこんなに名島くんに捕まってしまうんだろう。昨日、たまたま名島くんの違う一面を見てしまったせいで変に意識しすぎているせいかとも考えたけれど、とはいえこの違和感はなんだろうか。
思い込みかもしれないけれど、名島くんの雰囲気も、なんとなくいつもと違うように感じる。いつも、というのはつまり学校で見ている胡散臭い名島くんを指すものであって、 今日の名島くんに対して抱いている嫌悪感は、胡散臭さからくるものとは違う部類のそれだ。
「一緒に帰ろうよ」
「え……なんで?」
「だって方向同じじゃん。それに──昨日も会ったし?」
平然と言われたそれに、私は言葉を詰まらせた。
昨日、地元の図書館からの帰り道に見た光景。いかにも悪そうな人たちと話す声。煙草を吸っていそうな会話。あれが、名島くんの裏の顔なんだとしたら。
『滝の中で俺ってどう見えてんの?』
昨日名島くんに言われた言葉。あのとき見た名島くんは幻じゃなくて、たしかに本人だったと言われているような感覚になる。
私の中で、名島くんは。完全無欠と謳われる、絶対に裏があるであろう名島皐月は。
「……私、名島くんのこと苦手」
「ふ。それ、昨日の質問の答え?」
「答えっていうか……うん、苦手っていうか、嫌いかも」
「奇遇。俺もさ、滝のこと見てるとなんか腹立つんだよね」
名島くんが笑う。棘 のある言い方なのに表情は笑っていて、それもまた不気味だった。
「まあ、こんなところで話すのもなんだし帰ろうよ。俺、滝にもっと聞いてみたいことあるからさ」
私は名島くんと話すことなんてない。
いったい彼は、なんの話をするつもりなんだろう。
名島くんのことが、やっぱり嫌いだ。



