「似合っているじゃないか」

 
 凪葉先輩は人差し指で僕の耳元の髪の毛を掬い、お揃いのピアスを眺めては嬉しそうに微笑んだ。


「これでやっと、願いが叶った」


 息を吐きながらそう言った凪葉先輩は何故か涙ぐんでいて、その表情に僕も胸に込み上げる何かを感じる。


 そこは凪葉先輩とよく一緒にお昼を食べた学校の中庭。しばらく懐かしい光景とその雰囲気を堪能したのち。


「じゃあ、そろそろお別れかな」


 凪葉先輩は立ち上がる。


「そうですね。それじゃあ」


 僕らは指を絡め、そして名残惜しさを感じながらもそっと解く。


「今度は現実(あっち)で、だね」
「はい。さよなら」



 桜吹雪が、僕と先輩の間を駆け抜けた。