君とそこら辺の石ころについて語り合いたいのだけど








スケバンとは、1970年代初頭から1980年代後半に流行った不良行為をする女子のことをさす。

上着の丈が短いセーラー服に長いスカート、竹刀をもっていたりマスクをしていたりと特徴は様々だった。


「…サングラスって稀だよな、たぶん」


僕はそんなひとりごとを呟いて、本を閉じる。昔の若者カルチャーがのっている本であった。
少し、西之宮さんのことが気になっている。

全くもって浮ついた意味ではない。

ただ、ただ、


「西之宮さんのこと、関係してます?」


僕はすぐそばできこえたそんな声に肩を上げた。
図書室という厳かな雰囲気の場所で大きい声を上げるわけにはいかず手で口元をおさえた。

僕に話しかけてきたのは先ほどまでカウンターに座っていた図書委員の女子である。

メガネをかけており、前髪は少し長く後ろ髪は一つに束ねている。上履きのつま先が緑色のため1年生である。
図書委員は本棚に片方の肩を預けて、「それ」と僕の手に持っている本に指を差した。


「西之宮さんがしてる格好のこと、知りたくて見てたんじゃないんですか」


「な、なぜ」


「なぜって私もそうでしたから」


意外だ。図書委員さんは全く制服を着崩していないし、真面目そのものな雰囲気なのになぜあのスケバン女のことを知りたいと思うのだろうか。
まあ、同じことを僕がきかれたとしても上手く答えられる自信はないのだけど。


「私、いいなあって思うんです」

「え」

「スケバンになってみたいってことじゃないんですよ。ただ彼女、したい格好をして人生楽しんでる感じしません?」

人生を楽しんでいる。そこまでは感じとれてはいないが、確かにやりたいことを突き進めているのは分かる。僕には到底できない。


「先輩も何かやりたいこと、あるんですか?」


僕は何も答えられなかった。静かに本をあった場所へと戻す。


「…私はありますよ。だから西之宮さんみたいになりたい」

図書委員はそう呟く。


「君は西之宮さんがなんであんな格好をしてるか理由を知ってるの」

「いえ、知りません」

「友達?」

「いえ」

「友達でもないのに西之宮さんみたいになりたいの?」

「はい」

「ふうん。君のやりたいことって何」

図書委員はにやりと笑った。そして人差し指を鼻の前に持ってくる。


「内緒です」


最近、出会う人たちはなんだか不思議な人たちばかりである。