君とそこら辺の石ころについて語り合いたいのだけど


病院の中に入る前、東田は足を止めた。そしてあたしの手を離す。
てっきり、病室の前までなんなら中までついてきてくれると思ったけれど、そうではないらしい。

「いってらっしゃい、西之宮さん」

心細くてみっともなく喉から「ふう」っと泣き声がもれる。
東田は困ったように笑う。予想以上の泣き虫加減なのだろう。地面に視線を落とす。そして数ミリの石ころを拾い上げた。
そしてあたしの手の甲を掬い上げてのせ、握らせた。

「石ころパワー!」

手をかざしてそう言った東田。ふっと体の力が抜けた。

「くだんな」

「憎まれ口叩けるなら大丈夫だね、ほら行ってきて」


あたしの背中を押してそう言った東田。すっと息を吸う。
手のひらにおさまっている石ころを握りしめた。よし、パワーきいている。
あたしは振り返らず、病院の中に入った。

『西之宮咲希』そう名前が貼られている病室の前。
サングラスはとれない。だって、また泣きっ面だし。
あたしは入り口の扉を握って、深呼吸をした。
くだんな、と言いながらもあたしは呟く。

「石ころパワー…」

扉をあけた。



「…うわあ」

あたしの姿をみるなり、咲希はそんな声をもらした。

正直どういう反応か感じ取れないが、妹が目を開いて言葉を発したことにまた涙が込み上げてくる。
約半年眠っていたのだからハキハキ話せというほうが鬼畜だ。だが、え、まさかスケバン云々の話忘れて素で引いてる感じだろうか。

あたしはサングラスを人差し指で押し上げてゆっくりと咲希に近づく。両親はあたしがなんでこんな格好をしているのか知っているため、心配そうにあたしと咲希を交互に見つめている。

「おねえちゃん…だよね」

「うん」

約束を覚えているのか、分からなかった。
咲希は何度か瞬きをしてあたしを見上げている。

そして、小さく笑った。



「サングラスは、予想外だったわ…おもろ」


笑ってくれてよかった。泣き虫隠し対策なのは黙っておこう。

咲希、


「おかえり」


あたしは、めいっぱいにドスの効いた声であごをくいっとあげてそう言った。