「なんで西之宮さんが謝るんだよ」
「だって、こんな話されても東田を困らせるだけだけだし」
「困ってないし、むしろ大事な話を僕に聞かせてくれてありがとうって感じだし、そもそも毎朝スケバンで来て風紀委員として止めてた時の方がおお困りでした」
「あらあ」
「他人事みたいな返事…」
なんだかお互い笑いが込み上げてきて小さく笑った。
時々思うことがある。咲希は苦しんでいるのに自分は笑っていて『楽しい』なんて感情をもっていいのか。
あたしは、前に進んでもいい存在なんだろうか。
この格好をするようになって、より一層その気持ちが強まることがある。
居心地がいい、楽しい、好き、妹もきっと事故がなければ今頃色んな感情を経験していたはずなのに。
「妹さんが目を覚ました時に、話すことがたくさんあって楽しみだね西之宮さん」
東田があたしにそう言った。その言葉が深く胸の奥に入っていく。
唇を噛み締めてなんとか涙を堪えようとしたがもう遅く涙が頬を伝っていた。
あたしは東田の言葉に気づけば頷いていた。
「え、西之宮さん泣いてる!?」
「うるさい泣いてない」
「サングラスの下から黒いのが流れてるよ!」
「実況しなくていい!」
「ごめん」
サングラスをしてようが、東田の影響によりあたしはメイクをするようになった。
マスカラが涙により少し取れて、それを含んだものが頬を伝っていく。指の腹でそれを拭うと確かにそれは黒かった。
「西之宮さん、今日はウォータープルーフのマスカラ選びに行こう。僕が買ってあげる」
「いらねえし、そんなに泣かねえし」
「はいはい」
「泣き虫じゃねえし」
「はいはい」
「これは目から出てくる毒みたいなもので触れると呪いであんたもスケバンになります」
「へえ、すごお」
東田があたしの手を握った。そしてにこにこと笑っている。
触れるとあたたかく、ほっとした。



