妹は、学校から塾へ向かう途中に交通事故にあった。
あたしがそれをきいたのは、安物ではなくそこそこ高いコスプレ専門店で買ったスケバン衣装を手に家に帰ったすぐのことであった。
「咲希が事故にあって病院に運ばれた。すぐに来て」と母から連絡があり急いで病院に向かった。
あとは本人次第ですだなんて不明確な慰めを医者ははいていた。
その言葉に両親は泣き崩れていた。
「おねえ、ちゃんのすけばん、見たかった」
事故の2日後、一度両親が家に帰った時に妹が目を覚ましたことはあたしは言わなかった。だってまた目を閉じてしまったから。悲しむだけだと思った。
ーーーじゃあ、あたしに出来ることって。
そこら辺の石ころは、石ころなりに必死に考えた。
祖母が見ていた古い画質のスケバンドラマを画面に穴が空くほどに見ながら、格好、髪型、雰囲気などを完璧に仕上げて鏡の前に立つ。
強く見せるために赤い口紅を塗った。
「…なんか違う」
理由はすぐに分かった。妹が目を覚さないという現実を感じる瞬間あたしはずっと泣いている。
この家に妹がいない。
いつ帰ってくるかもわからない。
そのこわさで毎日泣いていたせいか、ずっと泣き腫らした目になっている。
これじゃ、咲希が目を覚ました時に認めてもらえないかもしれない。そう思った。
だから、サングラスをかけた。
「愛希、あんた何してんの」
あたしの部屋を開けた母があたしの格好をみるなりそういう。慣れない視界の色の中にうつる母もあたしと同じような顔をしている。
あたしたちは、どうやって前に進めばいいのだろう。
どうしたら、咲希を助けられるんだろう。
「…スケバン」
「みたら分かるわよ、なんでそんな格好してるの」
「咲希と約束したから」
「約束?」
「目、覚ましたらスケバン姿で言ってやんの」
「なんて…」
「おかえりって」



