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あたしは、そこら辺に転がる石ころである。

「咲希!!」

なぜ私ではなく、事故にあったのが妹だったのだろうか。そんな思いが消えない。
意識不明の重体で病院に運ばれた妹の咲希はたくさんの機械に囲まれた真ん中で目を閉じていた。

ガラス越しに見える妹をあたしはただ何度も名前を呼んだ。

私が中学3年生の時である。

妹は事故が起きた2日後、病室が移され触れられるようになった直後なぜか1度だけ目を覚ましたことがある。
薄く開いた瞳。あたしはすぐさま立ち上がり、咲希に駆け寄る。

「咲希!!」

名を呼んだ。すると妹は口を小さく開いた。
何か伝えようとしているのだと耳を口元に寄せる。


「す…け、ば」

「なに?咲希、なんて言ってるの?」

なんとか言っていることを聞き取ろうと必死になっていると咲希は言葉を幾分か振り絞って大きくし、掠れた声をつなげていった。


「おねえ、ちゃんのすけばん、見たかった」


妹は再び目を閉じてしまった。

そして妹はまた眠りについてしまう。
その後意識不明のまま咲希はまだ目を覚さない。