「西之宮さーん!」
スケバンは見つけやすい。たくさんの人が体育館に集まる中すぐに西之宮さんは見つかった。
話しかけた私に怪訝な顔をする西之宮さん。
「ダレ?」
「やだなあ、北島ですよ!」
メイクも濃く、髪の毛もスプレーで染めてメタルバンドっぽい格好となった私に西之宮さんは気づかず名前を言ったらその警戒はすぐに解けた。
「すごい格好だね、もうすぐ出番?」
「はい、緊張します」
「頑張れ」
「西之宮さん」
「なに」
「西之宮さんがスケバンじゃなかったら、私ここに立ってなかったよ」
西之宮さんはなんとも言えないような顔をして静かにサングラスを押し上げる。
いつか、素顔みてみたいな。友達になりたいな。
私がステージを成功させたら、「友達になってください」って伝えよう。
「ありがとね、スケバン西之宮さん」
「…うん」
幾分か西之宮さんの声が高く、か弱くなる。もしかしたら西之宮さんにもいろんな面があってたくさんの想いが巡っている。
「この体育館に私のデスボイスめいっぱい響かせるから、ちゃんときいててくださいね」
どでかい隕石だったかもしれない石ころが隕石に戻ることはないだろうけど、形を変えて誰かの背中をおせるほどの大きさであればそれがどんなだって立派な石だ。
文句なんて言わせない。
大人しくて、隅で1人でいる私も私で、メタルとお笑いが好きで人の前で歌う夢を持っている私だって私だ。どんな自分も否定なんてしない。
すっと息を吸う。
かき鳴らされるギターの音。両足を広げて重心を低くする。
私は体育館の天井が飛んでいくんじゃないかと思うほどのデスボイスを響かせた。



