自分にたいしての『イメージ』というのはそれなりに分かっている。
真面目そう、根暗、話つまらなさそう。
どれも正解で不正解だ。
結局自分はこうなんだ、と決めつけられるほど性格は1つに定まってなんかいやしない。
真面目で根暗な部分もあれば、不真面目に暴れたい時だってある。
どこからか入ってきた小さな石ころが誰かの足先にあたって私の席の前に辿り着いた。
あの石ころだって最初はめちゃくちゃでかい隕石だったかもしれない。
本当は自分には秘めた何かがあるはずだと信じている。人とは違う、何かだ。
「北島さん」
石ころは誰かの足先でまた蹴り飛ばされた。
私の前に誰かが立って私は顔を上げる。クラスメイトだった。その中でも私とは違い目立つグループにいる女子。
そんな子が私に話しかける時はだいたい頼み事をする時だけだ。
「どうしたの」
「ごめんけど、今日の放課後の掃除当番変わってくんない?」
やるわけねえだろ!自分でやりな!!掃除当番しなきゃヘル行きDeath!!!
「いいよ」
「わあ!助かる!ありがとう!今度ジュース奢るね」
こう言われて、ジュースを奢られたためしはないが奢られたとしてもまたそれにお返ししないといけないのかなとか色々考えてしまうため、もう私に当番をかわらせたことなんて記憶から抹消してほしい。
そんなこと言われなくても私から離れた瞬間に忘れてるだろうけど。
これまで一度も心の中で唱えられるメタルは口に出されたことはない。
妄想の中、私はステージの真ん中でここにいるのだと叫んでいる。
実際は放課後の教室に1人。
「…お前ら全員ここが墓場death」
そんな独り言を呟きながら箒で集めたゴミをチリトリに入れようとする。
しかし、1人でするには難しくなかなかゴミが中に入ってくれない。
「クソが」
「口わる」
私の小さな一言に言葉が返ってきた。驚いて顔を上げればそこにいたのは西之宮さんだった。
「西之宮さん…」
「最近も掃除当番じゃなかった?」
「ああ、うん、えっと、頼まれて…」
気まずくて、私は再度床に視線を落とす。
少し散らばってしまったゴミを箒で再度小さく小さくまとめていく。
西之宮さんがこちらにゆっくりと近づいてきた。
「断ればいいのに」
そう言ってしゃがんだ西之宮さん。チリトリを片手でおさえて私を見上げた。
少しだけサングラスの隙間から瞳が見えた。綺麗だった。
「ありがとう」
チリトリの中にゴミが収まっていく。
スケバンが掃除を手伝ってくれている。なんとも意外な光景だと思いながら私はまた「ありがとう」と呟いた。
西之宮さんは立ち上がってゴミ箱にそれを捨てにいく。その背中が教室の窓から入るオレンジ色の光に照らされている。ああ、かっこいいなあ。
「西之宮さんって、なんでスケバンの格好してるの」
そう聞いてみた。
西之宮さんはゴミ箱にチリトリをぶつけて、へばりつくゴミを落としたあとこちらを振り向く。
言いたくなさそうに口をへの字に曲げていた。
「言う必要ある?」
「言ったでしょう、私は西之宮さんに憧れてるって」
「だからなんだよ、教える理由にはならないし」
「ならへんかあ」
「そのエセ関西弁やめてよ」
吹き出すように笑った西之宮さん。私は少し嬉しくなった。
西之宮さんが笑っている、私が笑わせられている。
なんだか、少し自分が特別になれた気がした。
「北島さん、だっけ」
「はい」
「結局メタルはやんないの?」
私はその問いに言葉をつまらせた。やらないというよりやれない。
こんな根暗な自分がどのタイミングで殻を破ったらいいかなんて分からない。
掃除当番を断れない自分が到底メタルなんて歌えないのは分かっている。



