すべての雑音を消し去るようにかき鳴らされるギター。嫌なことや不安、不満を蹴散らすように頭をふっている人々、そして響くデスボイス。
私は、メタルが好きだ。
「いいじゃんやれば」
私のスマホの画面をみた西之宮さんがそう言う。そうだろう、彼女からしてみればそうなる。
やりたいこと、ふうん、やればいいじゃんって。
私は力なく首を横に振る。
「なんで?」
「みんながみんな西之宮さんみたいにはなれないんだよ」
西之宮さんの眉がぴくりと動く。少し喧嘩をうっているみたいな口調になってしまった。そんな気はさらさらなかったが、そういう声色になってしまったのは少なからず西之宮さんにたいして嫉妬心があったからだろうか。
自分にはこんなことできないという劣等感。
「西之宮さんさっき言ったでしょ、私みたいなタイプは西之宮さんみたいな人を苦手としてるって」
「ああ、うん」
「私にはそういうイメージがついてるんだよね」
「真面目とか、影薄いとか、根暗とか?」
「言いすぎじゃない?」
「ごめん」
かちゃりと西之宮さんがサングラスを押し上げる音が聞こえ、ぎこちない空気が漂う。
私は両手をパンっと叩いた。
「つまり、ですね、私はメタルが好きで、いつかメタルでステージに立ちたいと思っているわけです」
夢のまた夢。妄想。
言うだけタダ。
そう言い聞かせる。西之宮さんは友達ではない。
ただ憧れている人に話を聞いてもらっているだけ。西之宮さんだって「ああ、なんか根暗が語ってるな」くらいにしか思っていないはずだ。
「なんでそんな話をあたしに?」
案の定西之宮さんは私にそう聞いた。
「いやあ、なんとなく西之宮さんなら話を聞いてくれそうだと思ってスケバンだし」
「スケバン関係ねえだろ」
あるよ、大アリだ。むしろ西之宮さんがスケバンじゃなければ話しかけていないと思う。
西之宮さんは「なんだよみんなスケバンスケバンって」と何やらぶつくさ言ったあと、「けっ」と笑った。
「ま、いいと思うよ。メタル本気でやってみたらいいじゃん」
「あ、いや、実際にやってみるとなると無理です」
「自分さっきから何言ってんのマジで」
「ガチでやるってなるのはこれまた違う話で…こうやって夢を夢として語るのはタダなので」
「夢を語るのはタダ、ねえ」
「悪いことでしょうか。このことは西之宮さんにしか言ってません」
「ナンデ?」
「西之宮さんのこと憧れているから」
「意味わかんね」
こうして西之宮さんと私の曖昧なお昼休みは終わってしまった。



