君とそこら辺の石ころについて語り合いたいのだけど



体育館では、有志のバンドが楽器をかき鳴らし始めていた。

「ごめん、遅れた」

すでに『文化祭実行委員』の腕章をつけた東田が人混みの後ろの方に立っている。
俺は東田に駆け寄りそう声をかけると、東田が俺の方を見た。

「南崎くん、全然大丈夫だよ。それにしてもすごい人だね」

「だね」

俺がそう返事をした瞬間、凄まじいギターの音がそこに響き渡る。
思わず肩をあげて手のひらを耳にあてた。
東田も同じようになっている。全く心の準備をしていなかった。なんでこんなハードな音が響いてんだ。
誰がやってるのかとステージの方に目をやるが何せ後ろの方だ。人混みでなにも見えない。

俺は改めて隣を見た。音に慣れてきたのか東田はゆっくりと耳から手を離す。
俺はごくりと唾を飲み込んだ。


「なあ、東田」


俺の声はかき消えている。


「俺、東田のことが好きかもしれない」


聞こえていない。そう思ったが、舞台の方に目をやっていた東田がこちらを向いた。
え、聞こえてた?べっ、別に聞こえててもいいけど俺は率直な思いを今ぶつけているだけだ。
東田は俺の方に顔を寄せる。
そして口元に手のひらを寄せて大きな声を出した。

「ごめん、何て?」

「え」

「今なんか話しかけたよね!音で聞こえなかった!なんか問題発生した?」

問題、えっと、発生というか、あの、告白の類だったので問題といえば問題なんだけど。
俺はすっと息を吸う。

ステージに立っている人も大きく息を吸っていた。


「俺、東田のことがす」

「ゔおおおおおおおおお!!!!」


なんでこのタイミングでデスボイス響かせてんだ。

俺はなんだか泣きそうになった。やっぱり無理かも。
神は曖昧な気持ちには味方してくれない。
東田は苦笑いを浮かべていた。

そして、何かに気づいたようにポケットからスマホを取り出した。
その画面に表示されていた文字を見る。「西之宮」であった。西之宮って、あのスケバンか。

この騒がしさでは電話に出れないし、見回りの当番中のため外に出ることをしない東田はやっぱり真面目だ。
一度電話を切り、メッセージを開いている。

俺はさすがに見ないように再びステージに目を向けた。凄まじいメタルである。こんなデスボイス出る人この学校にいたんだ。

そんなことを思っていれば、控えめな力で俺の肩を叩く感触。俺は隣を見る。東田が少し慌てたように俺の耳に顔を寄せた。

神様は本当に意地悪だと思う。この時だけ、音が止んだのだから。



「好きな人が、困ってるんだ!僕、行ってくるね!」



駆け出していったその背中姿を俺は見つめていた。
原田、俺、曖昧さをもぶつかられずにフラれてしまいました。
原田はきっと「大丈夫大丈夫」そう言ってなんてことないように笑うだろうな、と思った。



そこに、失恋のメタルが鳴り響いていた。