女だろうが男だろうが、俺は東田という人間が好きになっていた。
だが、その気持ちを伝えるのは難しいことだと分かっている。
知れば知るほど、もっとと思ってしまう。これが恋心なのかどうかも自分ではよく分からない。
原田の作戦は成功だったと思う。廊下ですれ違えば目があって、自然に話をするようになったし、普通の友達みたいな距離になれた。
「賑わってんなあ」
俺の隣に並んで歩く原田がそう言った。
言葉通り、日頃は静かな廊下も人で溢れかえる今日。
気づけば文化祭当日を迎えていた。
俺の気持ちは未だに曖昧さを抱えている。
「ねえ、原田」
「俺ってやっぱりおかしい?」
「なんだよ急に」
俺はもうすぐで東田との関わりが終わってしまう前に結論を出したかった。
声をくぐもらせて俺は言葉を放つ。
「…男が、好きかもしれない」
賑わいを見せる廊下。笑い声や出し物の声掛けに自分の声はかき消えているものだと思ったが、原田の耳はちゃんと俺の声を拾っていた。
「男がってより、東田のことが、だろ」
「…そうだけどさ、でも、もし、東田が女の子の格好してなかったら俺、たぶん東田のこと気になってなかったよな」
「まあ、そうだろうけど、所詮きっかけだろ。あの事がなかったとしても、もしかしたら東田のこと好きになってたかもしれねえじゃん」
「でも…」
「違った道に行って、こうなってかもって想像して苦しむよりこれからどうなりたいかって話だと思うぜ南崎」
「原田…」
「まあ、あれだよな、あの時もし違う道に行ってたら、あなたはこういう人生になってましたよ〜みたいな正解って死んだら教えてほしいよな」
「激しく同意」
「なっ。死んだら天国地獄あんのかな」
「どうだろ、死んでからじゃないと分かんないよね」
「俺たち殴り合いの喧嘩したから地獄かな」
「これからいいことやって、お互い天国で会おうぜ」
「なんつう会話してだよ俺たち」
「楽しい文化祭なのにね」
「それな」
お互い吹き出すように笑って俺たちは自然と足をとめた。原田が俺の方に向く。
「実行委員の見回り、もうすぐだろ」
「うん、有志のバンド。東田と見回りすることになってる」
原田は俺の片方の肩を軽く押した。
「いってこいよ」
「原田、文化祭まわる人いる?」
「なめんな、死ぬほどいるわ」
「ははっ、よかった」
原田は俺に拳をみせた。ああ、よかった。こいつと喧嘩して、仲直りして、相談して、なんてことない話をして。
俺をそこら辺の石ころのように、普通に扱ってくれた唯一の友達。
「南崎、俺にだってさ、その気持ちの曖昧さよく分かんねえし、たいした相談にはのれてないかもだけど」
「原田…」
「無理に結論だして気持ち伝えるよりもただ率直に思ったこと伝えるのも悪くないと思うぜ。まだ俺たち高校生だろ」
俺は頷いた。そしてこつんと原田の拳に自分の拳をぶつける。
「じゃ、いってくる」
俺は駆け出した。



