君とそこら辺の石ころについて語り合いたいのだけど







「尾行って…本当に大丈夫なの」

「大丈夫だってスケバン尾行しとけば絶対あの子につながる」

「本当かな」

「友達なら絶対そうだって。てか俺と接点あるって本当にあのスケバン言ったのかよ」

「言った言った」

「接点って…むずいな」

俺たちは門の近くにある茂みに隠れながらこそこそと話す。要はここでスケバンを待ち伏せして帰るところを尾行するという安易にも程がある作戦を決行した。
到底そんな簡単に見つかるわけがないと思う。

だが案外こんな時間も非日常でたのしかったりするので別にいいや。

「スケバン来ねえし、ちょっと似顔絵書いて」

「似顔絵?」

「俺顔覚えてないんだって」

俺は鞄からノートとシャーペンを取り出す。そしてあの子の姿を思い出しながらなんとか描き始める。
白い肌にうっすらと頬がピンクに染まっている。
胸元まで伸びる黒い髪、少し長めの前髪からのぞく綺麗な瞳。
描いて気づいた。あ、全然思い描いていたのと違う。

「できた?」

「え、あ、いや」

「見せろ」

隠そうとしたが、それは奪い取られる。原田は視界に入れた瞬間吹き出すように笑った。


「絵下手くそ!」

「うるさいな、似顔絵なんて描けるわけないだろ」

俺はノートを奪い返しむっとして原田を睨みつけた。そして再び自分が描いた絵を見る。全くもって似ていない。あの儚さは俺の画力では伝えられるはずもないのだ。

「お、来たぞスケバン」

原田がそう言って身を縮める。俺は慌てて全く似ていない似顔絵が描かれた紙を鞄の前ポケットに捩じ込む。
スケバンは1人で門をくぐり俺たちがいる逆側の道へと足を進めていた。
原田と俺は慌ててスケバンの後ろをついていく。
歩き始めてしまえば特に隠れる場所なく俺たちはすぐに顔だけ隠せるように体の前に鞄を抱えた。

スケバンから数メートル後ろを歩きながら、俺たちは顔を寄せる。


「振り向かれたら終わるな、これ」

「でも普通に帰り道一緒だと思えば違和感なくない?変に隠れる方がそれこそストーカーみたいでやばいって」

原田は「確かに」と難しげな顔をする。俺たちは真剣な顔で探偵みたいなことをしている気でいるがやっていることはただのストーカーである。死んでもあの子が見つかるまでスケバンにはバレてたまるか。

俺はただ、もう一度あの子に会えたらそれでいい。
ついでに名前と、あわよくば連絡先も知りたいけど。

どんどん追加されていく煩悩を軽く頭を振って散らした。


「南崎ストップ」


原田がそう言って俺の前に腕を伸ばした。そして俺の袖を掴んで道の端に引き摺り込む。


「なんだよあいつ、いきなり足止めやがって」

「びびった」と俺の肩を軽く叩いた原田。物陰からスケバンの方を見るとある場所で足を止めていた。

その目の前にあるのは


「カラオケ?」

入り口付近でスマホをいじりだしたスケバン。誰かと待ち合わせだろうか。
待ち合わせ、ということは、あの子の可能性だってある。
俺は期待を膨らませスケバンを見つめる。


「…誰と待ち合わせしてんだろうな」

そう言う原田の声色も少し期待を滲ませていた。

「でももし、あの子が現れたとして俺たちそっからどうしたらいいの」

俺がそう言うと原田は悩むように少し唸った。
そして手のひらに拳をぽんっと跳ねさせた。


「偶然装ってカラオケの受付で合流して、一緒に部屋入るってのは?」

「気持ち悪くない?」

「南崎が口説けば落とせない女いないって」

なんで俺のことなのにそんなに自信過剰になれるんだよ。と、俺はため息をこぼす。
こいつは俺を買い被りすぎだと思う。

「そんなわけないじゃ」

「おっ、誰か来たぞ」

原田が俺の言葉を遮った。誰か来た。俺はその言葉に期待を持って顔を向ける。
ーーーが、

「あれ、あいつ」

原田の声も幾分か低くなった。その俺たちの小さな声は一緒になって空中に消えていく。


「…風紀委員」






俺たちは顔を見合わせる。

スケバンのもとに駆け寄ったのは毎朝門番のように俺たちを見張っている風紀委員の男であった。
同じ学年ではあるがクラスは違う。廊下ですれ違っても挨拶もしない。
ただお互いが顔を見合わせれば、ああこんなやついたねくらいの関係。

それにしても風紀委員と俺たちよりも接点がなさそうに見えるが、あの2人は一体どういう関係なのだろうか。


「あの2人付き合ってんのかな」

原田が顎に手を添えてそう言う。

「どうだろう」

別に付き合っていたところでなんてことはないのだが、なんというか意外である。
風紀委員が1番取り締まらなければならない相手ではないのだろうか。

俺は疑問は浮かぶものの、今日はあの子は現れないということだけは理解したので身構えていた体の力を抜いて原田に「どうする」と問う。

「ちょっと面白そうだし、行ってみるか」

原田はにやりと笑っていた。俺の返事を待たずにカラオケの方に歩き始めてしまう。
スケバンと風紀委員は一足先にカラオケに入っていったため俺たちにはまだ気づいていない。

俺は呆れたように笑って原田に着いていく。原田の言うとおりちょっと面白そうだと思った。