君とそこら辺の石ころについて語り合いたいのだけど



だが、俺の願いはそんな容易くは叶わなかった。
スケバンは足を止め、俺の前に立った。
そして、眉を顰めて俺を睨みつけている。

「なんで教えないといけないんデスカ、そんなこと」

わざとらしい敬語を使いながらそう言ったスケバン。
俺は込み上げてくる焦燥を堪えながら笑みをつくる。


「実は、原田が、あの時一緒にいたやつが気になってるみたいで」

ごめん原田。

「じゃあハラダが聞きにくればいいじゃない」

スケバンは原田の名を若干巻き舌で放っていた。相当嫌悪感を持たれてしまっている。
俺にたいしてもだけど。

「まあ、シャイだしさ、あいつ」

「シャイなやつがナンパなんかしてきますかね」

確かにとんでもない矛盾だ。自分でどんどん墓穴を掘っている気がした。
このままではスケバンが俺にたいして抱いた嫌悪感をそのままあの子に伝えられてしまう。
つまり、話せもしないまま俺の恋は終わる。

それは勘弁してほしい。

ぎゅっと強く拳を握って俺はスケバンを真っ直ぐ見た。


「ごめん、本当はあの子のこと気になってるの俺なんだ」

「でしょうね」

「スミマセン」

呆れたようにため息をついたスケバンがへちゃげた鞄の紐を指先に引っ掛けて肩にまわす。
歩き始めたスケバンを慌てて俺はまた追った。


「分かった、じゃあ名前だけでも」

「嫌、無理」

「同じ学校かはきいていいだろ」

「うーん」

「頼むよスケ…西之宮さん」


石ころになりたかった。そう願っていたのに、俺はいつのまにかチヤホヤされすぎて、『この俺が頼んでいるのに?』ととんでもない俺様的考えが頭をよぎる。
ああ、ここまで調子に乗ったか自分。


「あんたは無理だね」

「なっ」

「どっちかといえばその原田ってやつの方があの子と接点あるかも」

「はあ!?」

自分の大きな声が廊下に響き渡る。
いつのまにか教室の戸まで来ており、スケバンは「じゃ」と何食わぬ顔で中へ入ろうとするが戸に腕を伸ばしてそれは阻止した。

またもや場がざわつく。もうそんなのどうでもいい。なんだ原田の方が接点あるって。どういう意味だ。

スケバンは揶揄うように口元に手のひらを置く。


「あら強引、イケメンだからってこんなことしていいとでも?腕へし折るよ」

「あの子の名前聞くまで通さ」

「みんなおはよう」

「ああ…」

身を縮められ、いとも簡単に防御は破壊される。腕の下を通られて俺は情けない声を出した。
中ではスケバンに「おはよう」とクラスメイトたちが挨拶を返す。なんだあいつ溶け込んでんのかよ。スケバンのくせに。

俺は口をへの字に曲げて腕を戸から外し、背を向けた。
朝のホームルーム5分前の予鈴がけたたましく鳴った。
なんであの子のことを何も教えてくれないんだ。簡単なことのはずなのに。

挑発をしているとしたらたちが悪い。

それに、唯一得た情報と言えば原田との接点だ。原田とあの子は繋がっているのか、だとしたらなんで俺に教えてくれないんだろう。

裏切ったのか。

いや、


「裏切るほどの友情すら、ないか」