君とそこら辺の石ころについて語り合いたいのだけど





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俺は、そこら辺に転がる石ころである。
ただの石ころなのに、なぜか皆んな俺をそうは見ない。


「はあ、今日もうぜえな風紀委員」


俺の後ろからやってきて肩に手を回してきたのは同じクラスで同じバスケットボール部の原田だ。不真面目でおふざけキャラで部活もよくサボる。だが、バスケの実力はあるためレギュラーからは外れない。

俺は原田が苦手であった。にもかかわらずよく一緒にいるのはこいつは俺と一定の距離を保ち深く干渉はしてこないから。

お互い、気持ちのいい距離感で上手く学校生活を送るために一緒にいると言っても過言ではないと思う。


「いい加減髪の毛黒くしてくれば、原田」

「ええ、だって茶色の方がモテるし」

「そうかよ」

俺は肩の重みをさらりと外して早歩きで校舎の中に入る。
靴をロッカーに入れようとすれば、中に何かが入っていた。ああ、まただ。


「うわ、また入ってんじゃん」

俺が動きを止めたのを見て原田が好奇心を滲ませながら中を覗き込んできた。
俺は、心底げんなりしたが表情に出すことは抑えてへらりと笑う。


「意外と古典的なことするよね、最近の女子」

「いやいや、前に南崎が『告白が手紙ってなんかいいよね』とかほざいたからだろ」


その場限りのノリというものだ。分かれよ。なんて毒づきながら俺は中に入っている手紙を取り出した。


「すごい、ハート型になってる」

「まじだ。手込んでるな」


普通の手紙の形ではなく、折り紙のように折られた紙はハート型になっていた。他にやることあんだろ。


「え、読まねえの」


「まあ、あとでいいよ」


「うわあやっぱモテる男の余裕っぷりは違うわ」


俺はそれを鞄の奥底にしまい込んだ。一生開かれることはないだろう。
見た目や、その場にいる時の雰囲気、学校生活でのヒエラルキー。それだけで俺は過大なレッテルを貼られている。

正直、息がつまりそうだ。

どこからか入り込んできた小さな石が廊下に転がっていた。そして皆んなそんなものは見えておらず、たくさんのつま先がそれを蹴飛ばしていく。

俺の目の前にもそれがきた。

ああ、これになりたい。


「あ、そういえばこの前の女の子」


俺は小石から視線を外して幾分か前を歩く原田に顔を向ける。そして小走りで原田の横に並んだ。

俺のつま先で蹴飛ばされた小石が数回バウンドして端の方に飛んでいく。


「何か分かった?」


原田は俺の質問に苦い顔をして手のひらを横に振った。


「それが何も」

「なんだよ」


期待させやがって。


「それがスケバン1年生と話そうにも中々会えないんだよ、学年違うしさ」


「スケバンはどうでもいいよ、あの隣にいた子がここの学校にいるってことさえ分かれば」


「それを知るためにもスケバン捕まえないとだろ」


「まあ、そうだけど…」


あの日、部活が久しぶりの休みで原田と駅近くをぷらぷらと歩いていた。
原田が悪ふざけで、最近話題になっている1年生に声をかけた。俺は、あまり度がすぎたからかいは良くないと割って入ったが、その子を視界に入れた瞬間なんかどうでも良くなった。


「まじ天使だったよね、あの子」

「南崎にそこまで言わせるのすごいよな、俺的には生で見るスケバンに気を取られすぎてもう1人の子の顔覚えてないっつうの」

「一生思い出さなくていいよ。スケバンだけ刻み込んどいて」

「充分刻み込まれすぎて、あのドデカサングラス無理やりかけさせられる夢みた。まじ悪夢だった」


「ご愁傷様」


原田に頼めばすぐにあの子のことも分かると思ったがそうではなかったらしい。
人付き合いがうまく、人脈が広い原田を利用しているみたいで罪悪感さえある。
こうなったら自分で探すしかないのかもしれない。