意識した途端、とめどない羞恥心に襲われる。
顔の火照りと息の乱れを感じずにはいられない。
まさか、こんなにも年下に、後輩に、皐月に…心が乱されているなんて。
悔しいのに、恥ずかしくてたまらないのに。
そんなことよりも、どくどくうるさい胸の音が聞こえてしまわないかということばかりが頭を巡って仕方ない。
皐月のことしか考えられないなんて、どうかしてる。


「もしかしてだけど…先輩、俺にドキドキしてくれてるんですか?」

「っな、ば、そんなわけ…っ」


“そんなわけない”と、断言したかった。
これ以上惑わされてたまるものかと、足掻こうとして。
…あぁ、無理だと悟った。


「…嬉しい。好きな人が自分を意識してくれるって、こんなに嬉しいことなんですね」


その甘さに、くらっと目眩がした。
自分を好きだと言ってくれている。
それが声、言葉、表情の全てから伝わって、胸の奥にすんなり馴染んだ。
目の前にいる、煩わしいと思っていたたった一人の後輩に、告白された。
相手は男、問題児。


「…あ、予鈴だ。じゃあ、俺行きます。先輩も、遅刻しないよーに」

「あ…そう、だな」


にひひ、と笑った眩しい笑顔。
生意気なところは相変わらず。
なのに、俺の鼓動は早まるばかり。