「え…いいんですか?」
「…なんだよ。嫌か?」
「い、嫌じゃない。…嬉しくて。ちょっとびっくりしたんです」
ここは影のはずなに、その笑顔が眩しく映る。
珍しく照れた皐月の頬が、ほんのり赤く染まった。
…そんな顔、初めて見た。
手渡されたネクタイをきゅっと握り締めて、皐月の首に巻き付ける。
もっと、もっと皐月の色んな顔が見たい。
笑った顔も照れた顔も、知ってるのは俺だけがいい。
わがままなのはわかってる。
でも…今はそれくらい、皐月に心を奪われてるから。
───この思いを、今、伝えたい。
その一心で、結び終えたネクタイをそっと引き寄せ──皐月の唇に口づけた。
「俺も、皐月が好きだ」
溢れた思いは、その一言に詰め込んだ。
きっと届くと信じて、言ったのだけれど…。
…っな、なんだこれ…恥ずかしすぎる…っ!
告げた瞬間に、大胆なことをしてしまったという自覚が芽生え、羞恥に駆られて仕方ない。
さっきまで触れ合っていた唇が、顔が、耳が熱い。
皐月の顔が見れなくて、恥ずかしくてたまらなくて。
ネクタイをパッと離し、ふいっと目をそらす。
「…っその、一応、返事を──っ!?」
すると、突然目の前が真っ暗になって温もりに包まれた。
それはぎゅうっと、きつく、強く。
俺という存在を確かめるように、力強い。
「…俺も。俺も、先輩のことが好きです。木瀬先輩の、恋人になりたい」
上から落ちてきたその声は、震えていた。
見上げれば、今にも零れそうな雫を目尻にためた皐月の顔があって。

