「でも、木瀬先輩はただ俺が生徒指導室に来るのが遅かったこと、校則を破ったことに対して怒るだけで、俺の容姿については何一つ触れなかった。怒り方だって、ちゃんと愛があった。それが凄く、嬉しかったんです。あぁ、“初めて俺自身だけを見てくれてる”って」
皐月はそう言い切って、目を細める。
たしかにこいつは飄々としていて掴みどころがない上に、ふざけたことを抜かすからムカつくことは何度もあった。
…だけど。
「…そんなの、当たり前だろ」
この、体も態度もでっかい生意気な後輩は、何があったって“皐月湊”であることに変わりはない。
皐月がどんな見た目でどんな格好をしていようが、俺は同じように接するだろう。
そしてそれは、逆も然り。
「おまえだって、俺を見てくれてる。風紀委員だから真面目なやつだと決めつけず、先輩後輩関係なしに踏み込んできただろ。だから、別に特別なことなんかじゃない」
皐月がそういうやつだから、俺も自然体でいられたんだ。
所属も年の差も飛び越えて、気づけばそれが当たり前になっていた。
「ふふっ…そういう優しいところが、好きなんです。あの日からずうっと変わらず、木瀬先輩のことだけを思ってる」
皐月の口から放たれた2度目の“好き”という言葉。
今朝はただただ動揺して、恥ずかしくなって、戸惑うばかりだったけれど。
「ははっ…ほんと、相変わらずどストレートなやつだな」
なぜだろう。
今は、素直に受け入れられる。
皐月の“好き”が、すとんと胸に落っこちて。
もっと聞きたいだなんて思うんだ。

