このどこまでも生意気な皐月 湊(さつき みなと)という後輩が入学してきてからというもの、俺の穏やかな日常が180度激変した。

スラリと伸びた長い手足に、日焼け知らずの白い肌。
驚くほどに小さな顔と長髪が相まって、ルックスの良さが際立っている。
入学初日からその美貌が噂になっていたため、2年生の俺の耳にも皐月の情報が入っていた。
そんなに綺麗な奴なら、さぞ品行方正なのだろう…と、勝手な想像をしていたけれど。


「はぁ…ほんと、いい加減にしてくれ。こっちだって好き好んでやってるんじゃな───って、え?お前、その耳…」

「ん…?あぁ、これ?昨日新しく買ったピアスです。気づいてくれて嬉しいなぁ」

「………」


見ての通り、皐月湊という男はとんでもない問題児だった。
初めて皐月と話したのは入学式の次の日。
登校2日目から指定の制服を着崩してやってきた。
もちろん即生徒指導送りとなり、先生に呼び出されたそう。
その挙句、着用していたパーカーを没収され、風紀委員である俺のところにまわってきた。
初対面の時でさえもこんな感じの飄々とした態度で、どこか掴めないやつだと感じたのを今でも覚えてる。

その日を境に、皐月は毎日と言っていいほどに制服を着崩して登校してきた。
何度注意しても怒っても改善の姿勢は皆無。
しかし、それでも違反は違反だからとパーカーやらネクタイやらを没収しては何故か毎回俺の元に来るようになった。
一度先生にどうして俺なのかと聞いたことがある。