この後輩、惑わし上手

とりあえず面倒事がひとつなくなったことに安堵しつつ、もう一方の問題はなにも解決してないことにため息をついた。
…と同時に、スマホをマナーモードにしていなかったことに気がつく。
皐月のことに気を取られすぎて俺が怒られる羽目になるのは、さすがにごめんだ。
スマホを取り出そうとポケットに手を突っ込んだとき、ブブッと振動が伝わって肩が跳ねる。
この振動の仕方は…LIMEか?
SNS特有の振動を感じて、誰からの連絡だろうと直感で気づいた。
それに続いて2通目、3通目とスマホが揺れる。
1限が始まるまであと5分ある。
返信する余裕くらいはあるだろうと思い、画面を確認して───息が詰まった。


『ネクタイ、大丈夫でした?怒られてません?』

『今日のお礼したいんで、何かご馳走様させてください』

『先輩のおかげで俺はお説教回避できたし没収されてないし、先輩も今日は放課後空いてるでしょ?』

『食べたいの、決めといてくださいね』


通知は4件。
そのどれも全てが、皐月からのもので。


「俺の返事聞いてねーし…」