特別好かれるようなことをした覚えもないし…。
…ただ単に、あいつの趣味が変という認識でいいんだろうか。
自分で言うのもなんだが、俺はこれといって人に好かれる特徴も何も無い。
ましてや、あいつは1年生で俺は2年生。
年の差という程でもないけれど、一応1個年は離れている。
悔しいが、皐月は顔もスタイルも良い。
性格はまぁ…生意気で面倒くさがりで、入学当初から教員に目をつけられるような問題児ではあるけど、悪い奴じゃない。
良く言えば、人懐っこくて可愛げのある…っていやいや、褒めてどうする?
というか、俺はあいつを“可愛い”と思ってるのか…?


「あー…だめだ。わかんねぇ」


今あいつの事を考えてたって、仕方ないのに。
…一体どうしたものか。
文字通り頭を抱えていると、担任が教室に入ってきて「SHR始めるぞー」といつものように教壇に立った。
そこでようやく、ネクタイがないことをどう伝えようかという思考に切り替わる。
普通に忘れたって言えばいいか?
日頃の行いも悪いわけじゃないし、怒られることもないだろう。
変な格好してるやつにはいつも声かけてるし、わざわざ自分から言う必要もないよな…なんて考えていたが。
担任は出席をとったあと、今日の予定など一通り話し終えるまで僅か10分かけずに教室から出ていった。
どうやら、俺のネクタイが無いことに気が付かなかったらしい。
1番後ろの席である上に、目立つ方でもないから気にもとめなかったのだろか。