私は精神病を抱えてることをマッチングアプリでは公開してる。
色んな人がいて、病気抱えてるって言うと引いてくる人もいるし、哀れみの目で見てることがわかるような人もいる。
そんな中出会った誠くん。
『俺も、精神科通ってるからわかるよ、辛かったでしょ』
認められた気がして、その言葉に泣いた。
中々病気の理解してくれる人が居なくて、マッチングアプリやめようかと思ってたから、最後の希望だと思った。
今日はそのマッチングアプリで出会った誠くんと会う日。
待ち合わせの喫茶店…ここかな?
喫茶店でお茶してから映画行くって言ってたけど、何見るんだろ…。
聞けばよかった。
ホラーとかだったらどうしよ。
まだ来てないのかな、お店の前で待ってるはずだけど…。
深くキャップ帽被ったメガネの男性にずっとガン見されてんだけど…。
写真では、メガネなんてかけてなくて猫と写ってた。
「あれ、梨々花ちゃん?遅かったね」
あ、この人なんだ。
なんかちょっとイメージと違った。
ランニングした帰り?ってぐらい、格好ラフすぎない?
「誠くんだよね、まだ時間になってないよね…?」
「僕が早く来すぎただけ」
なんだ、びっくりした。
「早く行こ、立つの疲れたし」
「あ、うん」
なんかこうはっきり言われると、もっと早く来た方が良かったのかなって思う。
時間通りに来たはずなのに。
「いらっしゃいませー!何名様ですか?」
「2名で、窓際の席がいいんだけど空いてる?」
「すみません、窓際の席は今埋まってまして…こちらの席でも大丈夫でしょうか?」
店員さん困らせてどうする。
見てわかるじゃん、結構人もいるしさ。
「じゃあ、待ちます」
いやいや、え??待つの??
「すみません、どの席でも大丈夫です、気にしないでください」
なんで私がフォローしてんの。
こんな自我強くて、どうやって過ごしてきたの?
迷惑かけすぎ、会って早々かけられた言葉もデリカシーないし。
「ではごゆっくり」
「大丈夫です、飲み物飲んだらすぐ出てくもんで」
デリカシーのない言葉ばっかり、もうなんも言えない…。
店員さん困ってるよ。
「ごめんなさい、なんか…」
フォローするのも疲れる。
「なんか元気ない?てか、アプリの顔写真よりいいね」
「あ、ありがとうございます」
「なんで敬語?気軽にタメ口でって言ったよね」
「そう、だね。ごめんね」
「分かってくれればいいんだよ。何飲む?僕クリームソーダかな、アイス食べたいし。この喫茶店あつい」
今は5月のわりに確かにちょっと外暑かったのはあるけど。
喫茶店の中の方が涼しく感じる。
私はちょうどいい。
「私にもメニュー見せてくれる?」
「あ、みる?見なくてもだいたいどこの喫茶店とも同じだよ」
同じかどうかは見て見ないとわかんないじゃん。
その店の雰囲気とかさ、色々違うじゃん。
思うこといっぱいだけど、言えない…。
「え、見たい…よ」
「じゃあ見たら?ん」
急にメニュー放り出されて、なんか見る気なくなる。
あ、でもここのウインナーコーヒー美味しそう。
「メニュー決まった?」
「まだ見てるから」
「早くして、暑いから頼みたい」
「…………先頼んだら?」
「一緒に頼まなきゃ仲悪いって思われるじゃん」
「じゃあもうちょっとまって」
ブレンドコーヒーも美味しそう。
自家焙煎…気になる。
でもちょっと甘いの飲みたい気もする。
ウインナーコーヒーにしよっと。
「決まった、店員さん呼ぶよ?」
「待って、僕が押したい押していい?」
「……いいよ」
ボタン押すのが嬉しいって何歳よ。
なんか子供っぽい……。
「僕クリームソーダ、そっちは?」
「ウインナーコーヒー1つください、以上で」
「かしこまりました」
「ウインナーコーヒーってなに?ソーセージ入ってんの?てかよくコーヒー飲めるね、あんな不味いもの…人間の飲むものじゃないでしょあれ」
「え…香りもあってほろ苦くて美味しいじゃん。カフェオレとかは?」
「カフェオレも飲めない、コーヒー自体無理」
「まぁ、得意不得意あるし…いいんじゃない?飲めなくても」
「まぁ、もともと飲む気ないけど」
何が言いたいのかよくわかんない。
「お待たせいたしました、ウインナーコーヒーのお客様、クリームソーダのお客様、こちらもお使いください」
小さなスプーンと長いスプーンが入ったケースとともにやってきた飲み物。
見た目はどっちも甘そう。
「ありがとうございます」
「それがウインナー?なんか、コーヒーに見えんね」
「そこまで、苦くないと思うよ」
「ちょっとほしい、いい?」
なんか距離感の詰め方が……。
あんま口付けてほしくない、でも断れない。
「すこしなら、これ混ぜて飲んだりそのまま飲んだりする人もいるよ。苦いのだめなら混ぜた方がいいと思う」
「混ぜたい!かして」
「あっちょっとまって……!あ、……あー……」
「あっつッ」
「勢いよく引っ張ったらこぼれるに決まってるよ」
何でわかんないかな。
「すみません、おしぼりの替えもらってもいいですか」
近くに店員さんいてよかった。
「拭いておくからトイレで冷やして来たら?」
「行ってくる、いってぇ……熱すぎ」
何で私、こぼした飲み物片付けてんだろ。
子供のしつけしてるみたい。
一人になった途端回りからの目線が気になった。
『何あの子たち』
『あの子可哀想』
私だってよくわかんない会話ばっかりして、嚙み合ってないのわかるよ。
ざわつく声がすべて私たちに向けたものなんじゃないかって怖い。
私こんな人と付き合える気がしない。
そう思ってたら誠くんが戻ってきた。
「ね、ねぇもう出よう」
「なんで、なんか用事あった?」
ぜんぜん周り見てない。
「……ごめん、ちょっと外の空気吸ってくる」
喫茶店の横にある路地に入ってしゃがみこんだ。
「もうだめ、限界かも」
こんな人だと思わなかった。
あ~あ、しっぱいした。
「こんなところにいた。しんどくなっちゃった?」
「誠くん……」
「映画、早めに向かう?」
気にしてるのだろうか。
「うん、向かおっか」
「620円」
「え?あ、ごめんもう払ってくれたんだ、出すよもちろん」
貸し借りはしたくない。
もっと優しいのかと思ってた。
病気の理解もあって、優しくて、話が合う人だと思った。
なんか全然イメージと違った。
「お金合ってるかな」
私はお金の計算が苦手。
「100円1つ多いよ」
「あ、ごめん。ありがとう」
「映画行こっか、行ける?」
「頑張る」
「無理しなくていいよ、今日じゃなくて改めてでも」
「あ…、じゃあ…そう、しようかな」
「じゃあちょっと公園行ってもう少しだけ話そ、落ち着くかも」
「ありがとう」
近くの公園のベンチに座ったら、なんだか重たい荷物下ろせた感じがした。
「はぁ…」
「ごめんね、俺のせいだよね」
「え?」
「あんまり協調性なくてさ、自分でもわかってんだ、これでもだいぶ良くなった方、周りの空気も分からないし」
「病気抱えてると辛いよね、わかるよ。私もだから」
この部分の理解があるのは、病気抱えてるからなんだよね。
誠くんも頑張ってるんだ。
私が責めちゃいけない。
「誠くん、私と一緒に闘病生活、送りませんか。病気と向き合えるように、付き合って行けるように」
「こんなだけどいいの?」
「私も、もちろん支えるし、自分じゃ気づけないところも少しずつ直していけたら、もう少し楽になるんじゃないかな、ほっとけないなーって思って」
「そっか、……僕と付き合うってこと?」
「付き合ってでもいいし、付き合わずに友達としてでも」
「付き合いたい」
「わかった、私も病気と負けないように頑張るから!」
焦ってたのかも。
付き合う人探すことに。
でもね、そのあとの日々はすごく苦痛だった。
思ってた通り、いやそれ以上に、辛かった。
「痛いんだけど、なにしてんの?」
「…ごめん」
触れたいなら触れればいいのに、近づけなくて足で軽く蹴ってきたり。
「今日ね、仕事先でちょっと褒められてさ…………聞いてる?」
「あ、ごめん、どうでもいい話かと思って聞いてなかった。今ゲームしてるから」
電話もただ繋げときたいだけでしょ?って話し始めると、ごめんどうでもいい話かと思って聞いてなかったって。
「今箱庭のゲームしてんだよね」
「それやめて」
「なんで?ただのゲームじゃん」
しかも広告で、私も見た事あるゲームでマッチングするアプリやってて…。
最悪。
ねぇ、私の事好き?
辛い。
しかもね、ネッ友と見せ合いっこしてたの。
「たまにネッ友とそういうことするけど、ストレス解消のためだから」
なに、それ。
私がいるのに?
「これはストレスの発散だから、梨々花とヤるのと全然違うから、浮気じゃない」
浮気だよ、それ。
なんでわかんないの。
「私じゃだめなの?もう見せ合いしないで」
「じゃあ梨々花も見せ合いっこ出来るの?出来ないでしょ、それに多分梨々花じゃ意味無い」
なにそれ。
ていうか、見せ合うって何。
辛い。
私何の役にも立ててないし、見下されてるし。
私には誠くんしかいないのに。
付き合って早々知って、1ヶ月辞めてくれてたんだけど、2ヶ月目3ヶ月目になってくると、見せ合いはしてないといいつつ、他の誰かのをビデオ電話で見てた。
ほかの女がいいのに、なんで私と付き合ってるの。
『今度のデート、話がある』
誠くんから急に連絡来て話って何?
『なに?きゅうに、今じゃだめなの?』
『大事なことって直接会って話さなきゃいけないでしょ?』
『わかった』
大事な話をするのに、誠くんが選んだ場所、想像出来る?
カラオケ。
2人きりで個室がいいからって。
ついて早々、ソファの上に靴下を脱いで正座し始めた。
「えっと…えっと、……」
「話ってなに?誠くん」
「あのね、……話は……。カラオケだし歌ったら?」
「話しそらさないで、ゆっくりでいいよ」
「あの…、わッ…別…、ッえっと、ごめッ」
「うん」
誠くん、自分から話があるって言ったのに、泣いてた。
なんで?むしろこっちが言ってもおかしくないなのに。
「もう、…限界。制限、かけられるのも、ストレス溜まって、どうしようも無いッ……、耐えられない、……むり、別れ…たい」
なんで誠くんが泣くの。
泣きたいのはこっち。
「わかった、じゃあ、もう恋人がするようなことは私とはもうしない、私とももう会わないってことね」
「それはちがう、会いたい、まだ友達でいたい……」
「なんで?そんな苦しいことある?」
「離れたくない」
おかしいな。
別れ告げたの私じゃないんだけど。
「……ずるいよ」
「……ごめん……」
「私も、もう…無理かな。耐えられないや」
付き合ったのが間違いだったのかな。
出会うところから間違ってたのかな。
それでも好きだった。
どんなことされても、私のことわかってくれるのは誠くんだけだと思い込んでたのが多分いけなかった。
悲しい、こんな終わり方。
「ごめん、もうさよならね」
「まって、…!」
腕を引っ張られて、抱き寄せられても、この好意は汚れてくだけ。
もう別れたんだもの。
顔が近くなって、薄暗くて、おかしくなる。
「……キスしてもいい?」
「よくない」
それでも無理やり、キスされた。
「…んっ……」
私も、普通じゃないや。
しつこくて、自分勝手で、女々しくて、でもたまに優しくて、なんで付き合ったんだろ。
私の体、汚れてく。
ごめんね。
見せ合いっこして、他の人も抱いてたのかな?
そんな疑問が浮かびながらも、汚れてく体に、泣いてしまった。
きたない、きたない、きたない、きたない、だれかたすけて。
こんなみにくいわたしを、だれかたすけて。
愛に溺れて、息苦しくて、ただただ悲しくて。
それでも、求められるのが嬉しくなって。
好きでごめんね。
「一緒に帰ろ、誠くん」
きっと私もずるい人。
こうして私は、恋人と別れた。
泥沼に溺れながら、続ける関係。
色んな人がいて、病気抱えてるって言うと引いてくる人もいるし、哀れみの目で見てることがわかるような人もいる。
そんな中出会った誠くん。
『俺も、精神科通ってるからわかるよ、辛かったでしょ』
認められた気がして、その言葉に泣いた。
中々病気の理解してくれる人が居なくて、マッチングアプリやめようかと思ってたから、最後の希望だと思った。
今日はそのマッチングアプリで出会った誠くんと会う日。
待ち合わせの喫茶店…ここかな?
喫茶店でお茶してから映画行くって言ってたけど、何見るんだろ…。
聞けばよかった。
ホラーとかだったらどうしよ。
まだ来てないのかな、お店の前で待ってるはずだけど…。
深くキャップ帽被ったメガネの男性にずっとガン見されてんだけど…。
写真では、メガネなんてかけてなくて猫と写ってた。
「あれ、梨々花ちゃん?遅かったね」
あ、この人なんだ。
なんかちょっとイメージと違った。
ランニングした帰り?ってぐらい、格好ラフすぎない?
「誠くんだよね、まだ時間になってないよね…?」
「僕が早く来すぎただけ」
なんだ、びっくりした。
「早く行こ、立つの疲れたし」
「あ、うん」
なんかこうはっきり言われると、もっと早く来た方が良かったのかなって思う。
時間通りに来たはずなのに。
「いらっしゃいませー!何名様ですか?」
「2名で、窓際の席がいいんだけど空いてる?」
「すみません、窓際の席は今埋まってまして…こちらの席でも大丈夫でしょうか?」
店員さん困らせてどうする。
見てわかるじゃん、結構人もいるしさ。
「じゃあ、待ちます」
いやいや、え??待つの??
「すみません、どの席でも大丈夫です、気にしないでください」
なんで私がフォローしてんの。
こんな自我強くて、どうやって過ごしてきたの?
迷惑かけすぎ、会って早々かけられた言葉もデリカシーないし。
「ではごゆっくり」
「大丈夫です、飲み物飲んだらすぐ出てくもんで」
デリカシーのない言葉ばっかり、もうなんも言えない…。
店員さん困ってるよ。
「ごめんなさい、なんか…」
フォローするのも疲れる。
「なんか元気ない?てか、アプリの顔写真よりいいね」
「あ、ありがとうございます」
「なんで敬語?気軽にタメ口でって言ったよね」
「そう、だね。ごめんね」
「分かってくれればいいんだよ。何飲む?僕クリームソーダかな、アイス食べたいし。この喫茶店あつい」
今は5月のわりに確かにちょっと外暑かったのはあるけど。
喫茶店の中の方が涼しく感じる。
私はちょうどいい。
「私にもメニュー見せてくれる?」
「あ、みる?見なくてもだいたいどこの喫茶店とも同じだよ」
同じかどうかは見て見ないとわかんないじゃん。
その店の雰囲気とかさ、色々違うじゃん。
思うこといっぱいだけど、言えない…。
「え、見たい…よ」
「じゃあ見たら?ん」
急にメニュー放り出されて、なんか見る気なくなる。
あ、でもここのウインナーコーヒー美味しそう。
「メニュー決まった?」
「まだ見てるから」
「早くして、暑いから頼みたい」
「…………先頼んだら?」
「一緒に頼まなきゃ仲悪いって思われるじゃん」
「じゃあもうちょっとまって」
ブレンドコーヒーも美味しそう。
自家焙煎…気になる。
でもちょっと甘いの飲みたい気もする。
ウインナーコーヒーにしよっと。
「決まった、店員さん呼ぶよ?」
「待って、僕が押したい押していい?」
「……いいよ」
ボタン押すのが嬉しいって何歳よ。
なんか子供っぽい……。
「僕クリームソーダ、そっちは?」
「ウインナーコーヒー1つください、以上で」
「かしこまりました」
「ウインナーコーヒーってなに?ソーセージ入ってんの?てかよくコーヒー飲めるね、あんな不味いもの…人間の飲むものじゃないでしょあれ」
「え…香りもあってほろ苦くて美味しいじゃん。カフェオレとかは?」
「カフェオレも飲めない、コーヒー自体無理」
「まぁ、得意不得意あるし…いいんじゃない?飲めなくても」
「まぁ、もともと飲む気ないけど」
何が言いたいのかよくわかんない。
「お待たせいたしました、ウインナーコーヒーのお客様、クリームソーダのお客様、こちらもお使いください」
小さなスプーンと長いスプーンが入ったケースとともにやってきた飲み物。
見た目はどっちも甘そう。
「ありがとうございます」
「それがウインナー?なんか、コーヒーに見えんね」
「そこまで、苦くないと思うよ」
「ちょっとほしい、いい?」
なんか距離感の詰め方が……。
あんま口付けてほしくない、でも断れない。
「すこしなら、これ混ぜて飲んだりそのまま飲んだりする人もいるよ。苦いのだめなら混ぜた方がいいと思う」
「混ぜたい!かして」
「あっちょっとまって……!あ、……あー……」
「あっつッ」
「勢いよく引っ張ったらこぼれるに決まってるよ」
何でわかんないかな。
「すみません、おしぼりの替えもらってもいいですか」
近くに店員さんいてよかった。
「拭いておくからトイレで冷やして来たら?」
「行ってくる、いってぇ……熱すぎ」
何で私、こぼした飲み物片付けてんだろ。
子供のしつけしてるみたい。
一人になった途端回りからの目線が気になった。
『何あの子たち』
『あの子可哀想』
私だってよくわかんない会話ばっかりして、嚙み合ってないのわかるよ。
ざわつく声がすべて私たちに向けたものなんじゃないかって怖い。
私こんな人と付き合える気がしない。
そう思ってたら誠くんが戻ってきた。
「ね、ねぇもう出よう」
「なんで、なんか用事あった?」
ぜんぜん周り見てない。
「……ごめん、ちょっと外の空気吸ってくる」
喫茶店の横にある路地に入ってしゃがみこんだ。
「もうだめ、限界かも」
こんな人だと思わなかった。
あ~あ、しっぱいした。
「こんなところにいた。しんどくなっちゃった?」
「誠くん……」
「映画、早めに向かう?」
気にしてるのだろうか。
「うん、向かおっか」
「620円」
「え?あ、ごめんもう払ってくれたんだ、出すよもちろん」
貸し借りはしたくない。
もっと優しいのかと思ってた。
病気の理解もあって、優しくて、話が合う人だと思った。
なんか全然イメージと違った。
「お金合ってるかな」
私はお金の計算が苦手。
「100円1つ多いよ」
「あ、ごめん。ありがとう」
「映画行こっか、行ける?」
「頑張る」
「無理しなくていいよ、今日じゃなくて改めてでも」
「あ…、じゃあ…そう、しようかな」
「じゃあちょっと公園行ってもう少しだけ話そ、落ち着くかも」
「ありがとう」
近くの公園のベンチに座ったら、なんだか重たい荷物下ろせた感じがした。
「はぁ…」
「ごめんね、俺のせいだよね」
「え?」
「あんまり協調性なくてさ、自分でもわかってんだ、これでもだいぶ良くなった方、周りの空気も分からないし」
「病気抱えてると辛いよね、わかるよ。私もだから」
この部分の理解があるのは、病気抱えてるからなんだよね。
誠くんも頑張ってるんだ。
私が責めちゃいけない。
「誠くん、私と一緒に闘病生活、送りませんか。病気と向き合えるように、付き合って行けるように」
「こんなだけどいいの?」
「私も、もちろん支えるし、自分じゃ気づけないところも少しずつ直していけたら、もう少し楽になるんじゃないかな、ほっとけないなーって思って」
「そっか、……僕と付き合うってこと?」
「付き合ってでもいいし、付き合わずに友達としてでも」
「付き合いたい」
「わかった、私も病気と負けないように頑張るから!」
焦ってたのかも。
付き合う人探すことに。
でもね、そのあとの日々はすごく苦痛だった。
思ってた通り、いやそれ以上に、辛かった。
「痛いんだけど、なにしてんの?」
「…ごめん」
触れたいなら触れればいいのに、近づけなくて足で軽く蹴ってきたり。
「今日ね、仕事先でちょっと褒められてさ…………聞いてる?」
「あ、ごめん、どうでもいい話かと思って聞いてなかった。今ゲームしてるから」
電話もただ繋げときたいだけでしょ?って話し始めると、ごめんどうでもいい話かと思って聞いてなかったって。
「今箱庭のゲームしてんだよね」
「それやめて」
「なんで?ただのゲームじゃん」
しかも広告で、私も見た事あるゲームでマッチングするアプリやってて…。
最悪。
ねぇ、私の事好き?
辛い。
しかもね、ネッ友と見せ合いっこしてたの。
「たまにネッ友とそういうことするけど、ストレス解消のためだから」
なに、それ。
私がいるのに?
「これはストレスの発散だから、梨々花とヤるのと全然違うから、浮気じゃない」
浮気だよ、それ。
なんでわかんないの。
「私じゃだめなの?もう見せ合いしないで」
「じゃあ梨々花も見せ合いっこ出来るの?出来ないでしょ、それに多分梨々花じゃ意味無い」
なにそれ。
ていうか、見せ合うって何。
辛い。
私何の役にも立ててないし、見下されてるし。
私には誠くんしかいないのに。
付き合って早々知って、1ヶ月辞めてくれてたんだけど、2ヶ月目3ヶ月目になってくると、見せ合いはしてないといいつつ、他の誰かのをビデオ電話で見てた。
ほかの女がいいのに、なんで私と付き合ってるの。
『今度のデート、話がある』
誠くんから急に連絡来て話って何?
『なに?きゅうに、今じゃだめなの?』
『大事なことって直接会って話さなきゃいけないでしょ?』
『わかった』
大事な話をするのに、誠くんが選んだ場所、想像出来る?
カラオケ。
2人きりで個室がいいからって。
ついて早々、ソファの上に靴下を脱いで正座し始めた。
「えっと…えっと、……」
「話ってなに?誠くん」
「あのね、……話は……。カラオケだし歌ったら?」
「話しそらさないで、ゆっくりでいいよ」
「あの…、わッ…別…、ッえっと、ごめッ」
「うん」
誠くん、自分から話があるって言ったのに、泣いてた。
なんで?むしろこっちが言ってもおかしくないなのに。
「もう、…限界。制限、かけられるのも、ストレス溜まって、どうしようも無いッ……、耐えられない、……むり、別れ…たい」
なんで誠くんが泣くの。
泣きたいのはこっち。
「わかった、じゃあ、もう恋人がするようなことは私とはもうしない、私とももう会わないってことね」
「それはちがう、会いたい、まだ友達でいたい……」
「なんで?そんな苦しいことある?」
「離れたくない」
おかしいな。
別れ告げたの私じゃないんだけど。
「……ずるいよ」
「……ごめん……」
「私も、もう…無理かな。耐えられないや」
付き合ったのが間違いだったのかな。
出会うところから間違ってたのかな。
それでも好きだった。
どんなことされても、私のことわかってくれるのは誠くんだけだと思い込んでたのが多分いけなかった。
悲しい、こんな終わり方。
「ごめん、もうさよならね」
「まって、…!」
腕を引っ張られて、抱き寄せられても、この好意は汚れてくだけ。
もう別れたんだもの。
顔が近くなって、薄暗くて、おかしくなる。
「……キスしてもいい?」
「よくない」
それでも無理やり、キスされた。
「…んっ……」
私も、普通じゃないや。
しつこくて、自分勝手で、女々しくて、でもたまに優しくて、なんで付き合ったんだろ。
私の体、汚れてく。
ごめんね。
見せ合いっこして、他の人も抱いてたのかな?
そんな疑問が浮かびながらも、汚れてく体に、泣いてしまった。
きたない、きたない、きたない、きたない、だれかたすけて。
こんなみにくいわたしを、だれかたすけて。
愛に溺れて、息苦しくて、ただただ悲しくて。
それでも、求められるのが嬉しくなって。
好きでごめんね。
「一緒に帰ろ、誠くん」
きっと私もずるい人。
こうして私は、恋人と別れた。
泥沼に溺れながら、続ける関係。



