そう言って、少女は画面越しにはにかむような笑顔を見せる。
動画配信サイトに上がったその動画は、&moreに加入が決まった少女たちが&moreになるまでのドキュメンタリーだった。毎日一本、加入メンバーの五十音順に動画が公開される。山梨香織はその最後のメンバーだった。
私はそれをぼんやりと観ていた。握っていたシャープペンシルはいつの間にか動きを止めている。勉強机の上にただ広げただけのノートは、まだなんの文字も身に纏っていない。真っ白なままで私を待っている。
スマホの画面の中の山梨香織は、知っているようで知らない少女に見えた。そうしてアイドルになっていく彼女に、胸の奥が切なくざらついた。その事実もまた私を苦しめる。まるで臓腑を握られているようだと思う。不快感がいつまで経っても消えない。
アイドルになりたくてなりたくて堪らない子もいただろうに、なりたいと思っていなかったなんて言うなら、その子たちが呑んだ涙があまりにも報われない。本当は自分を可愛いと思っていて、凄いねと言って貰いたいくせに、そんなことありませんなんて顔をする。くだらない。暗い画面に映る自分が一番、くだらない。
私は右端に辿り着いた動画の再生バーを見届けると、パタンとスマホを机に伏せた。
アイドルになったからといって、全員が全員輝けるわけではないのだ。最後列の端っこで、マイクも持たせて貰えないまま、ひっそり卒業するアイドルだって珍しくない。山梨香織も、きっとそう。そうに決まっている。自分に言い聞かせる度に生まれる虚無感が、背中に張り付いて、いつまで経っても私をじっと見ている。暗い部屋の中でスマホを照らすライトだけが眩しくて、そっと目を伏せたらどこまでも深い影があった。
動画配信サイトに上がったその動画は、&moreに加入が決まった少女たちが&moreになるまでのドキュメンタリーだった。毎日一本、加入メンバーの五十音順に動画が公開される。山梨香織はその最後のメンバーだった。
私はそれをぼんやりと観ていた。握っていたシャープペンシルはいつの間にか動きを止めている。勉強机の上にただ広げただけのノートは、まだなんの文字も身に纏っていない。真っ白なままで私を待っている。
スマホの画面の中の山梨香織は、知っているようで知らない少女に見えた。そうしてアイドルになっていく彼女に、胸の奥が切なくざらついた。その事実もまた私を苦しめる。まるで臓腑を握られているようだと思う。不快感がいつまで経っても消えない。
アイドルになりたくてなりたくて堪らない子もいただろうに、なりたいと思っていなかったなんて言うなら、その子たちが呑んだ涙があまりにも報われない。本当は自分を可愛いと思っていて、凄いねと言って貰いたいくせに、そんなことありませんなんて顔をする。くだらない。暗い画面に映る自分が一番、くだらない。
私は右端に辿り着いた動画の再生バーを見届けると、パタンとスマホを机に伏せた。
アイドルになったからといって、全員が全員輝けるわけではないのだ。最後列の端っこで、マイクも持たせて貰えないまま、ひっそり卒業するアイドルだって珍しくない。山梨香織も、きっとそう。そうに決まっている。自分に言い聞かせる度に生まれる虚無感が、背中に張り付いて、いつまで経っても私をじっと見ている。暗い部屋の中でスマホを照らすライトだけが眩しくて、そっと目を伏せたらどこまでも深い影があった。



