嘘を吐いた。全部嘘だった。何もかもが薄っぺらい作り話で、頼りない虚勢だった。夢の中の少女は正しい。正しいから、あんな幼稚な反論をした。間違っているのは私だ。
 私は――私は、本当は詩子に言われる前から、山梨香織が&moreになることを知っていた。なぜなら彼女の加入が発表されたその瞬間、私は&moreのSNSを見ていたのだ。誰よりも早く、アイドルの山梨香織を見つけていた。
 興味がないなんて嘘だ。本当に興味がない人間は、アイドルのSNSなどチェックしない。けれどそれがただ純真な興味かと問われれば、答えは否だ。なぜなら私は、アイドルが嫌いだからだ。大嫌いだった。私に無いものを、一生をかけても絶対に手に入らないものを、全部持っているところが嫌いだった。涙や苦悩でさえ美談になるのが許せなかった。心底、妬ましかった。だから、と接続詞をつけるつもりは無いが、私はいつの間にか、彼女たちのSNSをチェックするのが日課になっていた。まるで監視するように、粗を見つけては心の中で悪態をつく。途方もなくくだらない日課だ。自分でも不思議だった。
 それでも、辞められない。目が離せない。これがアイドルかと思った。
 私はあの少女の言う通り、興味がない振りをしているだけ。興味がない振りをして、醜い執着心を向けた相手に、ある種の羨望さえ感じる自分を否定しようとしているだけ。
 あの時、&moreのSNSを開いたのは、誰か知っている人間が、自分ではない人間が、そのスポットライトの下に立ってしまうことが怖かったからだ。確かめずにはいられなかった。安堵したかった。あれは私に関係のない、違う世界の御伽噺なのだと。
 しかしそれは現実になった。山梨香織は、たった今、アイドルになったのだ。