「嘘吐いとるやろ」
鋭く声をかけられたのは、教室を出て、トイレへ向かう曲がり角だった。立ち止まり、振り返ると知らない女生徒が私を見ている。見たことがある子のような気もするし、会ったことがないような気もする。勘違いかと思ったが、廊下には彼女と私しかおらず、彼女は確かに私に双眸を向けていた。
「は?」
「詩子に言ったこと。あれ、嘘やろ」
「なんのこと」
思わず出た硬い声に動揺する。どこか私に似た顔立ちをした彼女は、そんな私を見透かし、にぃと馬鹿したように口角を上げた。
「&moreは好きやないって、詩子に言ったやろ」
「好きやないのはほんまや。あんな世界が自分中心に回っとるって思ってそうな人たち、私は好かん」
「へぇ」
「なん?」
「〝興味ない〟言う割にはよう知りよるね」
カッと頬に朱が差したのを、皮膚の上で弾けた熱から強く感じた。私は今、侮辱されたのだ。名前すら知りもしないこの子に。怒りに似た感情が背筋を衝動的に駆け昇る。私は本格的に彼女につま先を向け、ぐっと睨みつけた。
「誰? 一年生?」
投げた質問に彼女は答えない。顎を少し持ち上げて、私を見据える。
「興味ないふりして、ほんまは一番意識しとるんやない?」
「違う。意識なんてしとらん。するわけがない」
「山梨香織のことも、ずぅっと視界の端で見とる。まるでセンサーが付いとるみたいや」
「違うって。なぁ、いい加減にせんと」
「知っとったんやろ? 朱花。詩子に話かけられる前から、山梨香織はアイドルになるって」
鋭く声をかけられたのは、教室を出て、トイレへ向かう曲がり角だった。立ち止まり、振り返ると知らない女生徒が私を見ている。見たことがある子のような気もするし、会ったことがないような気もする。勘違いかと思ったが、廊下には彼女と私しかおらず、彼女は確かに私に双眸を向けていた。
「は?」
「詩子に言ったこと。あれ、嘘やろ」
「なんのこと」
思わず出た硬い声に動揺する。どこか私に似た顔立ちをした彼女は、そんな私を見透かし、にぃと馬鹿したように口角を上げた。
「&moreは好きやないって、詩子に言ったやろ」
「好きやないのはほんまや。あんな世界が自分中心に回っとるって思ってそうな人たち、私は好かん」
「へぇ」
「なん?」
「〝興味ない〟言う割にはよう知りよるね」
カッと頬に朱が差したのを、皮膚の上で弾けた熱から強く感じた。私は今、侮辱されたのだ。名前すら知りもしないこの子に。怒りに似た感情が背筋を衝動的に駆け昇る。私は本格的に彼女につま先を向け、ぐっと睨みつけた。
「誰? 一年生?」
投げた質問に彼女は答えない。顎を少し持ち上げて、私を見据える。
「興味ないふりして、ほんまは一番意識しとるんやない?」
「違う。意識なんてしとらん。するわけがない」
「山梨香織のことも、ずぅっと視界の端で見とる。まるでセンサーが付いとるみたいや」
「違うって。なぁ、いい加減にせんと」
「知っとったんやろ? 朱花。詩子に話かけられる前から、山梨香織はアイドルになるって」



