結局、山梨香織は詩子の言った通り、進級を目前に東京の高校に転校した。詩子が悲しそうに、
「喜んであげんとね」
 と呟いた。
 山梨香織と仲が良かった子たちは、色紙を書こうと言った。お別れ会で渡すのだそうだ。色とりどりのペンで彩られた色紙の端。授業中に回ってきたそれに、私は小さく文字を並べた。さようなら、元気で。その別れの言葉に、痛みがあることを誰も知らない。それでもきっと、あの頃、私たちは同級生だったと穏やかに思い出す日が来たら、あの涙に名前がつけられる気がする。