婚活中毒

 結美が身を乗り出し気味に亜沙美に言った。

「えっと……例えば、運転免許証の顔写真がプロフ写真だったり」
「え、免許証そのまま? もう少し盛る気ないの?」と結美。
「自宅の洗面所で自撮りしてて生活感丸出しなのとか」
「背景くらい確認しようよ」と奈々華。
「うん、そういう人が何人もいてさ。中には干しっぱなしの洗濯物が鏡に写ってて、しかもオバサンが着てそうなベージュの下着も写ってたの。自分のパンツっぽいのも写っているのとかあったし」
「キモ!」
「てか、プロフ写真あげる前に気づけよって話だよね」
「マジそれ。節穴すぎる」
 意外にも食い付きがいいな、と亜沙美は内心思った。

「他は?」
「77歳のおじいさんとか」
「マジ!? その歳でアプリ使いこなせることに驚きなんだが」
 興味本位で最高齢の登録者を検索したら、この高齢男性がヒットしたらしい。
「うん。プロフ写真は病室みたいなところでさ。自己紹介には、“暇だからいつでも会える。車ないから迎えにきてください”って一言」
「マジか。それ絶対介護要員目当てじゃん」と奈々華。
「てか、迎えは迎えでも……別の迎えの方が先に来そうだね」
「ギャハハ! それあたしも思ったわ。姫果ナイス!」
「ヤバい、今のめっちゃ面白いんだけど」
「ちょっと! 私は真剣なんだよ!」
「だから面白いんだよ。で、他には?」
「まだありそうだよね」
「みんな、普通に失礼すぎるんだけど……」
「でも、あるでしょ?」
「あるけど……」
「あるんかいっ。ま、これだから亜沙美は一緒にいて飽きないんだよね」
「そうそう」
「それが亜沙美ちゃんの一番の魅力だと思うよ」
「一緒にいて飽きさせないって、長く一緒にいるためには欠かせない要素じゃん」
「だから私たち、中学の頃から十年以上も一緒にいられると思うし」
「うーん。友達としてはそれでいいかもしれないけど。アタシ、今まで恋愛は一年と続いたことない……」
「恋愛の長さは関係ないよ。私なんて今まで一度も交際歴なかったけど、今の旦那とは付き合って半年で結婚したし」と奈々華。
「私は前の彼氏と五年付き合って同棲までしたのに、結婚の話を切り出した途端『面倒臭い』って一方的にフラれた。今の婚約した彼とは去年マチアプで出会ったけど、初めからお互い結婚前提だったからトントン拍子に進んだよ。だから、お互いの価値基準が同じか近い人を選ぶといいのかな。そういう意味では、恋愛と結婚は別なんだなって思った。もちろん、恋愛経験はないよりあった方が導入はスムーズかもしれないけどね」
 
 奈々華や姫果の話を聞きながらも、亜沙美にはまだ腑に落ちないところがあった。
 これまでの恋愛で得た経験を捨てるなんて、どうしてもできない。
 失敗したからこそ、次こそはもっといい相手を――。
 そう思って、ここまで婚活を続けてきたのだから。

「で、話戻すけど。他にヤバいエピソードはある?」
「結美、楽しんでない?」
「え、そりゃそうでしょ」