「そうだ、俺、いいもの見せてあげるよ」

アスマは突然ポケットから財布を取り出し、中身を見せてきた。

「……?」

理彩は戸惑ったが、ちらっと中をのぞくと、そこには見慣れないものが並んでいた。

・千円札が大量に折りたたまれている
・外国郵便の封筒
・なぜか爪切り

「これ、全部なんなの?」

「ん? ちょっとしたコレクションみたいなものかな」

千円札をコレクションする意味が分からないし、外国郵便? なんだかますます怪しい。

「最近ね、郵便局の防犯カメラの設置場所を調べるのが趣味なんだ」

——出た。やっぱり危険な方向に進んでいる。

理彩の頭の中で、警戒アラームが鳴り響く。

「アスマくんって……もしかして、本当に銀行強盗とか考えてる?」

「ははは! 違う違う! 勝負事が好きなだけだよ!」

いや、絶対違うでしょ。

「それにさ、110番ってさ、どのタイミングでかけるのがベストなのか考えたことある?」

「……ないよ!」

「ほら、110番ってさ、通報するにも最適なタイミングがあるわけよ。例えば、誰かが犯行を目撃してからすぐ通報すると、警察が動くまでの時間を計算できるじゃん?」

——本当にヤバい人だった。

理彩はそっとスマホを握りしめ、自分が110番するべきタイミングを本気で考え始めた。