アスマとの奇妙なデートから数日が経ち、理彩はすっかりこの出来事を忘れかけていた。マッチングアプリは即退会し、普通の日常に戻ったはずだった。

だが、そんな平穏は長くは続かなかった。

ある日の仕事帰り、理彩はコンビニで風邪薬を買っていた。最近、気温の変化が激しく、喉の調子が悪い。レジで会計を済ませようとしたとき、横から突然声をかけられた。

「理彩さん!」

驚いて振り向くと、そこには見覚えのある男——アスマが立っていた。

「えっ、アスマくん?」

「いやあ、偶然だね!こんなところで会うなんて!」

偶然……本当に? 理彩の心臓がざわつく。そもそも彼の住んでいるエリアは少し離れているはずなのに。

「最近、どうしてる? マッチングアプリ、退会しちゃったよね?」

——バレてる。

「あ、うん…ちょっと仕事が忙しくて…」

「そうか、そうか。でもこうやって会えたのは運命かもね!」

運命どころか悪夢の再来だ。

「ちょっと風邪気味なの?」アスマは理彩の手に持った風邪薬を見て言った。

「ああ、うん、まあ軽い風邪かな…」

「それなら俺、いいお粥のレシピ知ってるよ!カレーにも応用できるんだけど——」

またカレー!? 理彩は笑顔を引きつらせながら、逃げるタイミングを探した。