城の見学が始まり、アスマは歴史に関する知識を滔々と語った。確かに詳しい。だけど、話の方向性がおかしい。

「ここって昔、戦があったんだよね。城を攻めるときって、銀行を襲うのと似てるよね」

「……いや、似てないよね?」

「敵の動線を読んで、いかに効率よく目的を果たすか。戦と強盗、考え方は一緒だよ」

この時点で、理彩の警戒レベルはMAXになった。どう考えてもアウトな話をしている。

「例えばさ、銀行のセキュリティって、こういう構造になってて──」

「ちょっと待って」

理彩は彼の言葉を遮った。

「アスマくん、もしかして、銀行強盗を計画してるの?」

彼は驚いた顔をした後、笑った。

「違う違う!そんなわけないじゃん。ただの趣味だよ!」

「……趣味?」

「そう!頭の体操っていうか、もし強盗するならどうやるかって考えるの、楽しくない?」

「……楽しくないよ!」

理彩は思わず叫びそうになった。冷静を装いながら、「どうしよう」と考える。もし彼が本当に何かを企んでいるなら、このまま一緒にいるのは危険すぎる。