待ち合わせの日、理彩はカフェの前でアスマを探した。すると、すぐにそれらしい人物を見つけた。写真のままの爽やかな好青年。加工なしでこれなら、意外と当たりかも?

「理彩さん、初めまして!」

「初めまして!今日はよろしくお願いします」

お互いに軽く挨拶をし、目的地の〇〇城へ向かう。移動中、アスマは歴史の話を興味深く語り、理彩も楽しく聞いていた。しかし、ふとした瞬間に、彼は突拍子もないことを口にした。

「レトルトカレーって好き?」

「え?」

理彩は唐突すぎて戸惑った。

「カレーってさ、メーカーによって味が全然違うじゃん?スパイスの配合とか、隠し味とか、めちゃくちゃ奥が深いんだよ」

「ああ…確かに。忙しいときに助かるしね」

適当に相槌を打つと、アスマは満足そうに頷いた。

「実は俺のカレーの知識はすごいんだよ。銀行強盗の手口と同じくらいね」

「え?」

理彩は耳を疑った。まさかの単語が飛び出してきたのだ。

「銀行強盗?」

「うん、銀行強盗ってさ、成功するには下調べが命じゃん?どこの銀行がどの時間帯に警備が手薄になるか、出入り口の位置、逃走ルート…そういうのをしっかり把握しないといけないんだよね」

「……なるほど?」

「カレーも同じでさ、どのメーカーがどのスパイスを使ってるか、しっかり分析しないと美味しいものは選べないわけよ」

「……えっと?」

いや、全然違う。違いすぎる。カレーと銀行強盗を同列に語る人間がいるなんて、人生で初めて見た。