ネットに上がる莇の歌声を聞くのが日課になった頃。俺は莇の動向について調べていた。
学校の授業が終わり放課後になると莇に感想を言いたくて猛ダッシュで隣のクラスに行くがいつも莇はいない。
「莇は?」
「莇?あぁ、もう帰ったんじゃない?」
クラスの奴に聞いても誰も知らないという。
これは避けられているのか…?俺はキョロキョロと廊下の端を見渡す。
帰るもの部活にいくもので賑わう廊下の人ごみの中、俺はチラッと見えた遠くに見える頭を追いかけた。
(莇みーっけ)
莇は廊下の角を曲がりどんどん階段を上っていく。一定の距離を保ちながら後をついていく。
(これは…)
莇は屋上へと向かっていた。初めて莇の歌声を聞いたあの日も屋上だった。
もしかすると莇は放課後いつも屋上で歌を歌っているのか…?
そう俺は屋上へと入らず扉の横に座った…すると程なくして綺麗な歌声が聞こえてきた。
透き通る高すぎず低すぎない心地良い歌声。
「………」
俺は目を瞑り耳に集中する。
(この歌聞いたことないな…)
莇の歌を聞くようになって気づいたことがある。莇の歌う歌はカバーなどではなく自身で作詞作曲しているということ。俺はロック系しか聞かないから俺が疎いのかもと思って調べたりしたが何も出てこなかった。莇の歌う歌は莇のものだった。
(新曲かな)
俺はそのまま心地の良い歌を聴きながら気づいたら意識を手放していた。