「莇!!!!!!!」
大声で朝から莇の名前を呼ぶ。名前を呼ぶと莇はビクッと身体を震わせ俺と目が合う。
「あのさ!昨日お前の…ふぐっ!」
感想を言おうとした途端、莇に口を塞がれ教室の外へと引っ張られる。
定番の人気のない渡り廊下へと連れて来られる。
「…で?なに」
怪訝な顔をしながら莇は俺に向き直る。
そして俺は息を吸った。
「お前の!歌!聞いた!すっげええええよかった!」
「………」
「俺泣いちゃった!初めて歌聞いて泣いたわ」
「…何、聞いたの」
「ぁ、ちょっと待ち」
俺は昨日聞いた曲の名前を確認する。
「Firefly!!」
俺が曲名を告げると莇の雰囲気が少し柔らかくなった気がした。
「そっか」
そういった莇は少し笑った。
その顔が綺麗で俺はドキッとした。
「お前名前は?」
莇に聞かれ答える。
「…猪狩 泉!!」
「…声でか」
そう言って二人で笑った。


