君のそばで


それは昨日のことだった。一週間後の土曜日、連れて行きたいところがあると(けい)から連絡があった。
疑問に思いながらも俺は承諾した。そして今日がその日だ。
どことなく(けい)から緊張が感じられた。いつも通りに見えるが何か違う。
(けい)はどこに向かおうとしているのだろう…。疑問に思いながら向かった先は…。

「…墓…?」
「そっ、霊園(れいえん)

整備され整えられた霊園(れいえん)、とても綺麗だ。

「そして、ここが」

(けい)の後を追ってある墓石の前で立ち止まる。

(…(あざみ)(ひかり)?)

そう彫られている。

((けい)の親族?お母さんもおばあちゃんも健在だと聞いてる…この人は…)

俺が疑問に思っていると

「俺の姉さん」
「え?」
「2年前に事故で亡くなったんだ」
「…事故」
「うん、俺より10歳年上で結婚が決まって海外で暮らすことになった。その時飛行機事故で…」
「2年前の飛行機事故って…」
「うん、当時のニュースはその飛行機事故で持ちきりだった。あの事故で婚約者もろとも…」
「…(けい)

俺は横にいる(けい)に手を握り返した。

「今日ここに連れてきたのは(いずみ)を姉さんに紹介するため」
「…紹介」
「うん、凄く心配かけたからさ!少しは安心してって言いたくて」

その(けい)の言葉に俺は笑った。

「初めまして!!」

俺は大きな声で言った。

猪狩(いがり)(いずみ)と申します!(けい)くんとお付き合いしてます!」
「…(いずみ)
(けい)くんはとっても優しいです」
「……」
「たまに何考えてるかわかんねーけど、でも俺のこと大事にしてくれるのは伝わってくるし」

少しでも安心してほしい。それだけだった。

「俺も(けい)のことが大好きだから…だからずっと大切にするので安心して下さい…」

でも段々恥ずかしくなって声が小さくなる。
自分の顔が熱くなってくるのが分かる。恥ずかしくて(けい)の顔が見れない。

「……ちょと、トイレ」
「……」

いたたまれなくなった俺はトイレへと逃げた。