一通り話し終わって家に帰ろうと公園を出て、莇が目の前を歩く。
その背中を眺める。
今日、莇がアップした曲を聞いて理解した。
学校での屋上で女子生徒が莇に声をかけた時今まで感じたことのない感情が沸き上がった。
(俺だけでいい)
そう思った。ケイの正体を知っているのは俺だけでいい。
莇の笑顔も眠そうな顔もリラックスしてメロディーを口ずさむのも何もかも知っているのは俺だけでいい。
俺で悩んでる顔も辛そうな顔も全て俺にだけ見せればいい。ほかの誰にも莇をやらない。
俺だけのものだ。これを独占欲というのか…初めての感情だ。
これが愛情なのか、好きということなのか…でも俺は莇とこれからも一緒にいたい、隣にいたい…これが好きと言いうことじゃなければ一体何などいうのか。そんなことを考えていた。
「猪狩?」
「…ぁ、今行く」
そういって笑ったら莇も笑った。今までみたことない優しい笑顔で…。
「あのさ…」
「ん?」
莇が言いにくそうに言葉を紡ぐ。
「俺の好きはさ…」
「うん?」
「猪狩とキスしたいとかそういう好きだけど、わかってる?」
「なっ!!お前、」
「…違う?」
「違わねーよ!!俺だってそうだよ!そういうのを改めて確認されると恥ずい…」
すると莇の手が俺の耳に触れた。
「っ」
唐突すぎて一瞬変な声が出そうになった。
「好きだよ、泉」
「…っ」
耳元で下の名前で囁かれそっと唇に柔らかい莇の唇が触れた。
「っ!!!!おまっ!!!」
身体の体温が急激に上がっていくのが分かった。
心拍数がどんどん上がっていく。身体がおかしくなるんじゃないかってくらい火照っていく。
「可愛い、泉」
「おまっ名前!」
「下の名前、泉でしょ?俺の特権」
そういってにこっと笑って俺の手を握った。
2人で初めて手を繋いで歩いた夜空はいつもより星が輝いていた。


