「なんか、様子おかしいんだよなあ~」
「あ?なんか言ったか?」

俺が呟いた一言に高校からの友達・片瀬(かたせ)が反応する。

「ごめん、独り言!」
(あざみ)の事か?」
「聞こえてんじゃん!なんでわかんの!?」

俺がそういうと片瀬(かたせ)は頭をかいた。

「だってお前最近、(あざみ)の話しかしてねーよ」

そう言われて時が止まった。最近放課後は屋上でずっと(あざみ)の歌を聞いている。
ふたりで過ごす時間が多いのは認める…だけどそんなに(あざみ)の話していたか?と疑問に思う。

「…してた?」
「口を開けば(あざみ)(あざみ)って俺まで(あざみ)の事に詳しくなりそうだ」
「…それは言い過ぎだろ~」
「いや、冗談抜きで」
「………まじ?」

そう聞くと片瀬(かたせ)は頷いた。
自分の無意識が浮き彫りになり恥ずかしい。

「で?(あざみ)がどうした?」
「…あ~今日の朝なんか様子変で…」
「変?」
「…うん…なんか避けられ、た?」

そういうと片瀬(かたせ)は「はぁ」とため息をついた。

「お前、昔からただの能天気な奴に見えて本当は人の変化に敏感だからな…お前がそう思うなら大方間違いじゃないんだろうな」
「………」
「思い当たる事は?」
「思い当たる、こと…」

全く分からない。昨日の屋上ではいつも通りだった。
普通に話して(あざみ)も笑ってた。別れ際も普通だった。

「……ない」
「…ない、ねえ」
「いや、本当に!昨日は普通だったんだよ!」
「ふーん、まあ後で本人に聞いたらいいんじゃないか?」

片瀬(かたせ)のその言葉に咄嗟に答えられなかった。

「…うん、まあそうだな」

曖昧な返事をして会話を終わらせた。
俺の勘違いなら嬉しい。誰も寄せ付けない(あざみ)が俺とだけ話してくれる。それが嬉しかった。
何かまずいことをしてしまったのか…。
俺は深く考えるのを辞めた。