夏の朝、街がまだ眠っているうちに目を覚ますと、窓の外に広がる青空が眩しくて、思わず深呼吸したくなるが昨日の出来事を振り返る。

「ん…おはよう蒼、起きたの?」

「あ、おはようございます。昨晩は、えっと…?」

「何その喋り方、覚えてる?」

「アニメを見て、眠くなってきて、……キスした」

「なんで、しちゃったの?」

「陽向が可愛くみえて…それで……ごめん!」

「いいよ。ていうか、付き合うんでしょ?オレら」

「それは言葉のあやって言うか、眠たかったからおかしかったというか」

「蒼いつもと雰囲気違って、言い方悪いけど面白かった」

「面白いってそんな…」

俺はショックだった。

勢いでキスなんかするもんじゃないって。

「オレは嬉しかったけどね、もっかいキスしてみる?シラフで」

「っはぁ?」

「いいじゃん!ほら」

眠い時とは反対に、陽向が積極的にこちらに視線を向けている。

「んっ……」

「蒼かわい」

「は、……そんな可愛くなんてない」

「そんな一面もあるんだね?」

なんだかんだ言いつつも、蒼は嫌な気はしていなかった。

それよりも、陽向といると心が暖かくなって、自然と笑顔になれた。

それが何よりいちばん嬉しかった。

「そういえば、声優の仕事、ちゃんと考えるなら考えてみなよ。
親に言うのどうしても難しそうならオレ付き添うよ」

「あー、覚えてたか陽向。
声優の仕事、ほんとにすごいと思ったんだ。
初めて、あんな技術を見た。声の役者だな」

「オレは応援するよ!蒼のやりたい事やるのが一番いいと思う」

「ありがとう」

「準備して学校行こっか」

2人は準備をして、家を出ようとした。

すると、陽向のお母さんが話しかけてきた。

「お弁当、2人分作ったから一緒に食べたら?陽向に持たせたから、お口に合うか分からないけどよかったら」

「え、ありがとうございます。お言葉に甘えさせてもらいます」

「良かったね、蒼。今日は一緒に食べれるね。これから一緒に食べよ?」

「あ、あぁ」

俺たちの季節だと言わんばかりのセミの鳴き声が鳴り響く朝、二人で登校した。

途中クラスメイトに出会って、「え、二人一緒に登校してんの?」と驚かれながらも、陽向は「おう!友達だからな」と普通に返していた。

その反応にとても嬉しく感じて、心が踊った。

その反面初めてできた友達との接し方が難しくて、少し戸惑う気持ちもある。

「蒼あれから寝れた?オレ爆睡だった」

「俺も、しっかり寝たよ。でも睡眠時間がこうも短いと眠たいな」

「やっぱりそう思う?リアルタイムで見るの辞めようかなあ」

「俺わかんないけど、リアルタイムで見ることに意味がある気がする」

こう話しながら学校に着くと、陽向はいつもいるグループの輪に入っていった。

「また後でな」

少し寂しさを感じつつも、他の人と話す陽向を見ると少しモヤモヤする。

陽向を取られた感じがして、モヤモヤが晴れない。

この気持ちはなんなのか…。

そうこうしている間に、気付いたら授業が始まっていた。

授業中の陽向は、やっぱり寝ていた。

でも、俺も相当眠くて、うとうととしてしまっていたら、先生に当てられた。

「これを展開すると……柳瀬、どうなる?書いてみろ」

「えっと、はい」

今まで勉強してきた自分の頭の良さに感謝しつつ、問題を解いた。

「正解、うとうとしてるなんて珍しいじゃないか。勉強のし過ぎか?」

「いえ、ちょっと興味本位で調べ物を…」

「いいことだな。けど、睡眠はしっかり取るように」

「はい、すみません」