黒龍王の縁結び師


外からヒヒンと嘶く声が聞こえた。
近くに馬車が止まっているのを蘭花は気づいていたが、今も止まっているということはやはり目の前の男の馬車らしい。
男は早くここを出たいのか、落ち着かないようだった。
もしかして主を待たせているのではと蘭花は思った。

「お急ぎのようでしたらまた改めていらしてはいかがですか?」
「主に嘘を言って市井に出てきているのです。
滅多に外に出ない私が何度も市井に来ているなどと知られれば、計画が台無しになります」
「はぁ」
「それで本題です。
貴女にこれから半年、主の側で主と縁のある女性を見つけていただきたいのです」
「それは、私に侍女か小間使いとしてずっと屋敷にいろと?」
「そうです」

蘭花は軽く口が開いた。
薄布のおかげで男には見えてないが、ため息は聞こえてしまっただろう。