男は首を横に振るが、蘭花はどうも腑に落ちない。
仕えている者が主をひいき目で見ているのではないのだろうか。
そんなに良い男で立場もあるのなら、縁組みの話などいくつもあるはずだ。
おかしいな、と蘭花は考えながらふと目の前にいる、男にしておくにはもったいない男の顔を見て、はたと気づいた。
「もしやその方のお好みは」
「あの方にそういったご趣味はございません」
一気に部屋の気温が急降下するような声で男は言い切る。
どうやらそういう誤解をよく受けるのだろう、明蘭の妄想、いや推測はすぐさま叩き潰された。
咳払いが聞こえ、蘭花は違う方に向いていた視線を気づかれぬように男に戻す。
顔を男からは見られなくても、なんとなくこういうのは気づくものだ。



