黒龍王の縁結び師


「私が使えているとあるお方に縁を結んでいただきたいのです、明蘭さん、いえ、蘭花(ランファ)さん」

ぴく、と膝に置いていた明蘭こと蘭花の手が動いた。
蘭花は明蘭の本名だ。
縁結び師として仕事をしているときは一応仮の名として明蘭という名前を使っていた。
本名を知っていると言うことは、蘭花の身元も色々と調べたのだろう。
こういう場合は面倒になることが多いので、内心蘭花は身構えつつ内心を悟らせないようにゆっくりと話す。

「私(わたくし)は縁結び師などと呼ばれてはいますが、縁の無いものを結ぶ力はございません。
それに何かご縁があるとしても、それが良縁となるかも不確定です」
「存じています。
ですが貴女は数々の良縁を結んできた。
最初は犯人捜しや失せ物探しなどをされていたようですが、こうやって店を構えるほどになったのは貴族達の良縁を結んできたからでしょう。
私は貴女が出してきた結果に希望を見いだし、こんな時間に供もつけずわざわざ市井にまで自ら来て頼んでいるのです」