黒龍王の縁結び師


「よろしいでしょうか」
「どうぞお入りください」

扉の外から男の声がして、明蘭は足下に袋を置くと居住まいを正した。

外套で身を包んでいた男が一人、店に入ってきた。
失礼、という声は一切緊張している様子は感じない。
外套を脱ぐと、ろうそくの火が男の顔を照らす。
細身で中性的な顔立ち、長い髪がさらりと落ちて一見女性のようにも思えた。

明蘭は男に椅子を勧めると、綺麗な所作で椅子に座った。
どうやらかなり良い家のものらしい。
こんなに綺麗ならさぞかしお相手も見つかりにくいだろう。
明蘭は男がここに来たであろう理由を勝手に推測し、羨ましく思いつつも同情した。